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田澤純一、2度目のオーディション。
圧倒的セットアッパー、守護神では?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2015/09/10 10:30
2013年、2014年はともに71試合に登板し、WHIPは1.20と1.19。メジャーでも有力なセットアッパーである田澤純一だが、クローザーはまた別の能力が必要なのか……。
フライが全部ホームランに見えた恐怖感。
「状態の悪さ」を彼がはっきりと認識したのは翌日、同じタイガース戦で7-2の8回に4番手で登板し、1回を三者凡退に抑えた後だった。田澤はこの場面で前日に逆転本塁打を許したマルティネスを中飛に打ち取っているのだが、後日こう明かしている。
「打たれた瞬間、『また、やられたかな』と思った。ビビってると言うか、フライが全部、ホームランになるんじゃないかぐらいの感じになってる」
それからの数試合、田澤は無失点に抑えながらも「自分に『何やってんだ』と言い聞かせて」とか、「気持ちが負けていた」というコメントを残し続けた。それは自分の投球内容に、まったく満足してなかったからである。
8月20日のロイヤルズ戦で、象徴的な場面があった。
この試合で、田澤は三者凡退で2試合連続の今季2セーブ目を挙げたものの、最後の打者を三ゴロに打ち取った瞬間、キャッチャーの方を振り向いて、胸に何度か右手を当てた。メジャーリーガーがよくやる仕草。“That's my fault.”つまり、『俺のミスだった』という意味である。
「サインは高めだったのに低めに行ってしまったからです。百発百中なんて有り得ないけど、逆球でも抑えられたからOK、ではいつか打たれると思う」
悪い予感が現実になったのはわずか3日後。
いつか打たれる――。彼の言葉が的中してしまったのは、それからわずか3日後のロイヤルズ戦のことだった。6-4と2点リードの場面でマウンドに上がった田澤は、1回6安打4失点と大崩れして逆転を許し、今季6敗目を喫する。
「打たれた球は全部高かった。調子自体は悪くないし、完ぺきに打たれたっていうあたりもそう多くはなかったんですけど、なぜか全部ヒットになる」
振り返れば、田澤がクローザーに指名されたのは、今回が初めてではない。
2013年の5月、レッドソックスは実績を持つ救援投手が次から次へと怪我で戦線離脱したため、田澤をクローザーに抜擢した。彼はこの時点でチーム最多の16試合に登板して2勝1敗、防御率2.51、18奪三振でリーグ最高の8ホールド。地元メディアも「タズが適任だ」と認めた上でのクローザー抜擢だった。