欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「技術やセンスなんて全く関係ない」
田中順也が語るサッカー選手の条件。
text by
小須田泰二Taiji Kosuda
photograph byKiichi Matsumoto
posted2015/07/27 10:40
一時帰国中の取材だったが、田中順也は見るからにコンディション良好な気配を漂わせていた。今、日本人でもっともCLに近い選手と言えるだろう。
「リーダーシップに関しては、元々持っていない(笑)」
さてカード選びはラスト。「技術」、「感受性(センス)」、「リーダーシップ」のカードが残った。なぜこれらの序列は低いのか。その質問に対して田中が発した言葉はストレートだった。
「技術やセンスなんて、サッカーをやっていくうえで全く関係ないと思います。だってそれだけを頼りにして生きて行こうとして、いざそれが通用しなくなったら、簡単に心がポキっと折れてしまいますから。そもそもリーダーシップに関しては元々持っていないんですけどね(笑)」
テクニカルなプレーヤーというイメージが強かっただけに、彼の口から出てきた答は予想していなかった。しかし冷静になって考えれば、田中の言う通りだ。
生きるか死ぬか。競争の激しいプロの世界に身を置いている人間だからこそ、サバイバルに必要な要素を順番に身に着けていっただけ。田中はリアルな目線でカードを順番に選んでいったのだ。
「サッカー選手としては正直、ヨーロッパチャンピオンズリーグに出場してゴールを決めたい。それが僕にとっての次なる野心です。去年は目の前で本気のチェルシーと戦っているのを観て、試合に出られなくて本当に悔しい想いを味わいました。でも、ここにいれば、つねにそうしたトップレベルの試合ができるし、結果にこだわり続けていけばおのずと道は拓けてくると信じている。
ステップアップを考えてこのクラブを選んで、トップシーンで活躍できれば……。あとちょっとのところまで来ている。ヨーロッパでやれるところまでとことん挑戦したい。まずは来季、絶対にステップアップのシーズンにしたいですね」
10枚のカード選びで浮かび上がった田中の次なるビジョン。彼の言うとおり、チャンピオンズリーグで結果を残せるようになったら……。そう考えると、夢は膨らんでくる。大いなる野心と強いメンタリティーをもって、田中は勝負のシーズンに挑む。