欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「技術やセンスなんて全く関係ない」
田中順也が語るサッカー選手の条件。
text by
小須田泰二Taiji Kosuda
photograph byKiichi Matsumoto
posted2015/07/27 10:40
一時帰国中の取材だったが、田中順也は見るからにコンディション良好な気配を漂わせていた。今、日本人でもっともCLに近い選手と言えるだろう。
チームで結果を残すために必要な3枚とは?
夢があって、それを支えるメンタルがあって……。それに続く要素として、田中は「経験」、「コミュニケーション」、「語学」の3枚のカードを選んだ。いずれも同列の扱いだ。この3枚は、サッカー人生に必要な要素というよりも、チームで結果を残すために必要な要素になるという。
「自分ひとりでサッカーをするわけではないですから、チームにどう溶け込んでいくか、新しい環境にどうやって入っていくかが大事。そういう風に考えると、この3枚のカードになると思いますね。苦しいときを乗り越えるためには『経験』が大切になるし、『コミュニケーション』や『語学』は、チームに馴染むために絶対に必要なものですから」
ポルトガル1年目の昨シーズンも、田中は苦労の耐えない日々を過ごした。練習では誰よりもゴールを決めていたが、一向に指揮官からの信頼を得られない。それでも、田中は一度も腐らなかった。
結局、リーグ戦のフル出場は一度のみ。トータル543分という限られた出場時間のなかだったが、5ゴールを決めた。チーム最多スコアラーが12ゴールだったことを考えると、ファーストチョイスのFWとして出場できていたら、「それ以上のゴールを決めている自信はあった」という。
「そのための準備として、チームメイトとはいつでもコミュニケーションを取りました。もちろんポルトガル語で。とくにナニ(元マンチェスター・U)はチームの中心的選手でしたから、彼とは積極的に意見交換しました。こっちから何も要求しないと自分でシュートを打ってしまうので、俺がこう動いたらパスを出してくれって言い続けました。実際、彼は本当にいいパスを出してくれるので、もっと出場機会があったらチーム得点王になれたと思います」
オリジナリティとフィジカルは必要ない!?
カード選びに話を戻すと、 続いて田中は「オリジナルティ(個性)」と「フィジカル」のカードをピックアップした。しかし田中はこの2枚のカードについては、その重要性を重くはみていないという。カテゴリーやリーグが変わればおのずとサッカーのセオリーも変わるものというのが、田中の持論である。
「正直に言うと、このふたつはあまり必要ないと思います。たとえば、いくら自分が個性を出したいと思っても、まずはチームのやり方に合わせないといけない。前線でくさびのボールをもらってコンビネーションで崩したくても、ポルトガルではサポートが遅いからダイレクトで落とせる場所に味方がいない。だから、FWは相手ディフェンダーに潰されないようにひとりで背負いながらプレーできる選手じゃないと戦えないことが分かる。つまり、新しい環境にどうアジャストしていくか。自分自身が慣れるしか選択の余地はないんです」