球道雑記BACK NUMBER
ロッテの清田育宏が輝く時……。
「史上最大の下克上」が再来する?
posted2015/07/22 10:45
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
清田育宏は気遣いができる男である。
球団行事の「初売り」では、正月から彼の職場であるQVCマリンに駆けつけてファンと接し、練習後や試合後にマスコミに声をかけられれば足を止めて、ときに笑顔で取材に応対する。東洋大学を卒業し、社会人野球のNTT東日本に2年在籍。そこで「野球人」ではなく「社会人」としての素養を磨いたのだろう。関係者間で彼を悪く言う声はまず聞かない。
そんな彼だから、つい余計なことまで考え込んでしまうことはよくある。それで躓くこともある。それが昨年2014年のシーズンだった。
打率.170、本塁打4、出場試合はたった24試合。
「監督やコーチがどういう風に自分を見ているのかとか気にしていたかなと思います」
気遣いができすぎる男ゆえの過ちとも言えた。
「史上最大の下克上」で最も輝いた男。
今から5年前の2010年、千葉ロッテはレギュラーシーズン3位からCS(クライマックスシリーズ)日本一まで勝ち上がり「史上最大の下剋上」と称された。その中心で光り輝き、一躍ときの人となったのが、清田育宏である。
この年がルーキーイヤーだった清田は、そのときはまだ全国的に無名の状態で、シリーズ成績3割3分3厘、1本塁打の活躍で優秀選手賞を獲得し、プロ野球ファンに広くその名が知れ渡った。
プロ2年目(2011年)も78試合に出場して前年比14試合アップ、3年目(2012年)はさらに9試合伸ばして87試合に出場。外野の選手層が厚い千葉ロッテのチーム事情を考えれば十分な結果なのだが、1年目の光輝く姿が強烈すぎたのだろう。自分で自分を追い込んだ。
何かを変えたいと思い悩んだ男は、一切の過去を振り返るのをやめた。自分の頭のなかにあるノイズを一切遮断した。
「試合に出られないのは自分の実力不足ですし……。チャンスをもらったときに結果が出せていないってことだけで、本当はもっと自分に自信をもって打席に入ってスイングして、それがたまたま打てた、たまたま打てなかった、それだけだと。そういう風に思えれば今みたいなシーズンがきっと迎えられたのかなって思いますね」
今季の清田は開幕こそスタメンを外れたが、5月9日から球団新となる4試合連続猛打賞を記録すると、そこから約1カ月間(23試合)連続安打を続け、一時はパ・リーグ打撃成績のトップに躍り出た。