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DeNAが目論む「脱・勝利の方程式」。
中畑監督が若手を一軍に呼ぶ理由。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/07/22 10:40
20日時点で、セーブ数では呉昇桓を1差で追う山崎康晃だが、防御率は呉の2.91に対して1.72。頼りたくなる気持ちはわからないでもないが……。
「調子のいい投手に期待して頼ってしまう」(中畑監督)
ところが周知のとおり、その勢いは交流戦で失われた。
3勝14敗1分で12球団中ダントツの最下位。引き分けを挟んで12連敗を喫するなど、失墜は驚くほど明白なものだった。
交流戦前までの中畑監督は、「奇跡に近いものがある。未知との遭遇をしてしまうと、すぐに現実に引き戻されて連敗とかしちゃうからなぁ」といった具合で、快進撃を自虐的に表現していたものだが、交流戦での惨事にはさすがに堪えたのか、チームの現状についてこう吐露していた。
「調子のいいピッチャーがいれば、それに期待して頼ってしまう。それがチームの辛いところかな」
ただこの時、交流戦後、そして後半戦へ向けてのビジョンが指揮官には見えていた。
中継ぎ陣のテコ入れは、本気で勝とうとしている証拠。
中畑監督は、チーム失速の原因と、その改善点をはっきりと口にしていたのだ。
「これまでは中継ぎが踏ん張ってくれたことが勝ちに繋がっていたけど、交流戦ではそれが全部真逆になってしまった。負けるべくして負けてしまったというかね。だから、仕切り直しをしなくちゃいけない。中継ぎのテコ入れも考えなければいけないね。先のことを考えれば、いい経験だったと言えるように。これからまた、しっかり勝っていけるように頑張ります!」
その言葉通り、中畑監督は交流戦後に中継ぎ陣のテコ入れを始めた。
6月23日に福地を、7月5日には萬谷を一軍登録し、昨年まで左のセットアッパーとして機能していた大原慎司も呼び寄せた。新戦力の一軍合流に留まらず、16日には登板過多でパフォーマンスが低下しつつあった田中をファームに落とした。
現有戦力に依存しすぎたことで陥った大失速。中畑監督はその教訓から、結果やそれまで果たしてきた役割に固執することなく、勝利への可能性を見出そうとしている。配置転換はその表れでもあるのだ。
中畑監督は、本気で勝ちにきている。