濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
無名の外国人選手が壮絶KOで王座!
新生K-1に息吹く“スター誕生”の夢。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2015/07/11 10:50
-70kg初代王座決定トーナメントは、全戦KO勝ちで進んだグレゴリアン(アルメニア)が優勝。「魔裟斗たちに憧れていた。夢が実現できてうれしい」とコメント。
K-1黄金期を彷彿させる“スター誕生”の物語。
旧K-1もそうだったではないか。第1回ヘビー級GP優勝者であるブランコ・シカティックも、K-1 MAX初代世界王者のアルバート・クラウスも、K-1に出るまでは日本ではほとんど無名の存在だった。アーネスト・ホーストもジェロム・レ・バンナもブアカーオ・ポー.プラムックもそうだ。
K-1は世界屈指の強豪が集まる場であり、同時に“スター誕生”の舞台でもある。無骨なルックスのグレゴリアンも、その闘いぶりに関してはスター性充分と言っていい。新生K-1の成長とともに、彼の名前と魅力も知られていくことになるのではないか。
「決勝戦では手の痛みが蓄積していたんですが、勝つか、すべてを失うかという気持ちで臨みました」
試合後にそう語ったグレゴリアン。彼にとって、新生K-1は人生をかけるに値するリングだったということだ。
新生K-1は外国人選手にとっても夢の舞台だ。
この日のワンマッチでは、赤コーナー、つまり格上の選手が予想以上に苦戦する試合が多く見られた。最終的には地力の差を見せて勝っているのだが、中心選手として求められる“痛快なKO”には至らない。-55kg王者の武尊も、-60kg王者の卜部も判定勝利にとどまっている。
つまり対戦相手が強く、実力をしっかり発揮したということだろう。言い換えれば、それだけK-1にかけていた。
ハキム・ハメッシュ戦を終えた武尊の第一声は「KOできなくて悔しいです」だった。
「僕は日本人が一番、気持ちが強いと思ってるんです。相手の心を折るつもりで闘いました。でも……相手も気持ちが強かったです」
日本で開催され、Krushで育った日本人選手が数多く出場する新生K-1。しかしそのリングは日本人だけのものではない。アルメニア人のグレゴリアンにとっても、フランスで活躍するアルジェリア国籍のハメッシュにとっても、K-1は夢を叶えるための舞台なのだ。外国人選手の強さが目立つことは、これからのK-1の可能性にほかならない。