濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日本人女子格闘家がアメリカで戴冠!
世界で戦う浜崎朱加の開拓者精神。
posted2015/07/25 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
現地時間7月9日、アメリカ・ラスベガスで開催された女子MMAイベント『インヴィクタFC 13』は、日本格闘技界にとって重要な意味を持つものになった。
この大会に出場した浜崎朱加(あやか)が、アトム級(47.6kg)タイトルに挑戦し、王者エリカ・チブルシオに判定2-1で勝利したのだ。“北米メジャータイトル”獲得はまぎれもない快挙。UFCには同階級がないから、浜崎は事実上世界一のベルトを腰に巻いたことになる。しかも、本場ラスベガスで。
実業団まで打ち込んだ柔道のバックボーンを持つ浜崎は、日本では敵なしの状態。しかしアメリカでは挫折を味わっている。2013年7月、2度目のインヴィクタFC参戦で、クラウディア・ガデーリャに完敗を喫したのだ。コミッションの規定で古傷のヒザにテーピングができないという事情もあったが、何よりも大きかったのがパワーの差だった。
「とにかくフィジカルがケタ違いで……」
試合の翌日、筆者の取材に答えている最中にも涙がこぼれた。それほどの悔しさと衝撃だったのだ。
得意の組技を生かすために打撃戦を挑んだ。
ほどなくして、浜崎はヒザの手術に踏み切る。約1年の欠場から復帰すると、階級を落として国内で2連勝を収め、インヴィクタFCでのタイトルマッチというチャンスを掴んだ。
手術も階級変更も、アメリカで勝つために選んだ道だった。ヒザに不安はない。「トラウマになっていた」という外国人選手のフィジカルも、アトム級では感じなかったという。適正階級での闘い、そして2年ぶりのアメリカで、彼女はその成長ぶりと抜群の対応力を見せた。
序盤から右フックと左ストレートが的確にヒット。組み技だけでなく打撃でも外国人選手と互角以上に闘えるところを見せた。実際、この試合では打撃での勝負がテーマだったという。
打撃で押されなければ、有利な体勢で組み技に移行することもできる。小内、大外、内股と、浜崎は柔道技で何度もテイクダウンを奪い、それがジャッジからの支持につながった。