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<高校野球100年を振り返る>
甲子園を彩った5人のアイドル球児。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/07/08 10:00
2006年、早稲田実業と駒大苫小牧との決勝戦は再試合に持ち込まれた。マウンドで汗を拭く斎藤佑樹の姿に「ハンカチ王子」フィーバーが巻き起こった。
一万通のファンレター。
「自宅と学校に一日百通ぐらい手紙がくるんです。(いままでに一万通以上来たらしい)甲子園以来、急に騒がれちゃって……。ボクは張り合いがあるし嬉しいんですが、練習中にグランドまで押しかけられちゃうと困っちゃうんです」(「週刊大衆」昭和49年11月7日)
1学年上に江川卓がいたが、無口でポーカーフェイスの怪物くんと、なんとも脇の甘そうな定岡のキャラクターは対照的。そこが愛嬌につながった。実力だけでは、1万通のファンレターは獲得できない、ということか。
その1万通の“記録”を、大会終了後わずか4日で達成したのが、サダ坊から3年、昭和52年の大会で準優勝校となった東邦高校のバンビくんこと坂本佳一。ピンク・レディーがヒットチャートを席巻したこの年の女性週刊誌の記事には「ファン公害」という物騒な惹句がついている。
周囲の加熱で体調を崩し……。
「坂本クンの住む家のまわりには、朝8時ごろから女高生が集まり始め、夜のふけるまで常時20~30人がウロウロ。(中略)坂本家のドアが開くたびに『キャーッ』カメラのフラッシュがパッ!
一番頭を痛めているのが電話で、朝6時ごろから夜中の3時ごろまで、鳴りっぱなし。したがって、受話器はフトンにくるんで取らない」(「女性自身」昭和52年9月15日)
家出少女、OLから中年女性にまでつきまとわれたというから、今ならば立派なストーカー被害である。当時まだ高校1年だった坂本は、あまりの周囲の過熱ぶりに体調を崩し、控え投手にまで落ち込んだ。ようやく調子の戻った3年夏までに学校に届いたファンレターは7万通、他にもお守り300個、ハンカチ300枚、ぬいぐるみ50体、返信用の切手やはがき1400枚……。それらはすべて学校側が倉庫に保管し、本人が見ることはなかったという。
ハンカチ! では次は……。