度重なるレンタル移籍から丹羽が学んだものとは？

　レンタル移籍には、「現所属チームの戦力構成に入らない選手の放出」という負の側面が間違いなくある。しかし、丹羽はこれに対し「コミュニケーション能力をより高める」という新たな付加価値を生み出したのではないか。

　驚くべきことなのだが、彼はレンタル選手にもかかわらず'10年には選手会長とキャプテンまでも務めていた。あるメディアに彼の肩書を書く際、「レンタル選手会長＆キャプテン」という表現を使おうとしたところ、編集サイドから「クラブにとって大事な選手なんだから、この肩書だと不都合なのでは？」とストップがかかったこともある。

「誰に彼の評価を聞いても同じことを言うと思います。常にポジティブで、ネガティブなことは口にしない。向上心の塊でもあった。ピッチ上では、一番後ろから声を出していた。身体能力で勝負するほうじゃなかったので、いろいろと考えてやっているな、と」（MF鈴木）

　天真爛漫な明るさとストイックな几帳面さ。

　一見相反する姿を見せ、J2での日々を送った丹羽。今回、話を聞いた3選手からはいずれも「彼が代表に入って本当に嬉しい」という声が聞かれた。なかでも神山は、J2のプレーヤー全体にとっても励みになると口にした。

「J2にいる選手からすると、自分も努力を続ければチャンスを掴めるかも、という希望になりますよね。ましてや彼は29歳で代表に選ばれた。その年齢でも入れる、という点を示したことも大きいですよね」

ガンバ復帰直後は、J1のレベルについていけず……。

　'12年、6シーズンぶりにガンバ大阪に復帰した丹羽だったが、再び壁にぶつかってしまったという。5月の代表候補合宿時には当時を振り返ってこんな話をしていた。

「ガンバに復帰後も当然『ラインコントロールできる』という特長を出そうとしたけれど……それどころじゃなかった。レベルが高くて、まずはガツガツと体を当てていかなきゃなと」

　復帰1年目は34試合中14試合出場にとどまった。さらに翌年、丹羽は再びJ2に逆戻りしてしまう。他でもない、ガンバ大阪が降格を喫したのだ。これで、少なくとも20代のうちの4年半をJ2で過ごすことになった。

【次ページ】　「ああ、早く明日の練習が始まらないかな！」