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広島・大瀬良の初白星に隠された、
優勝した24年前との奇妙な一致。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byNanae Suzuki
posted2015/05/28 11:00
5月13日の巨人戦でも7回5安打1失点と、勝利はならなかったものの復調の手がかりはつかみつつある大瀬良大地。
「黒田、右腓骨筋腱周囲炎により登録抹消とのこと」
その2日後、カープ特集のために、若鯉たちの密着取材をお願いしている赤坂英一から連絡があった。
「黒田、右腓骨筋腱周囲炎により登録抹消とのこと」
額に滲む汗は、観測史上最高の暑さを記録した5月の太陽のせいだけではなかったかもしれない。黒田のスペシャル・インタビューはどうなるのか? 果たしてこのままカープ特集でおし進めていいものなのか――。
連休に入っていたが、編集長に電話せずにはいられなかった。すると、その答えは……、
「言うとったるがのう。狙われるもんより、狙うもんのほうが強いんじゃ」
調子のいいときにワイワイ騒ぐのは誰もがすること。最下位のチームだからこそ、特集する意味がある。かくして広島カープ特集は決行となった。「雪に耐えて梅花麗し」。黒田の座右の銘とともに。
9回裏、カープの攻撃で球場の時間が一瞬とまった。
5月4日、マツダスタジアム、大瀬良大地、5回目の先発。初回、巨人に1点先制されながらも、持ち前の直球とスライダーを中心に、ランナーを出しながらもきっちりと抑える投球を見せた。2-2の同点で迎えた9回裏、カープの攻撃で球場の時間が一瞬とまった。
1死満塁から代打の小窪哲也が打ち上げたインフィールド・フライを、巨人の一塁手・フランシスコと三塁手の村田修一がお見合いして落球。フランシスコが本塁を踏んだ後に、三塁走者の野間峻祥が訝しげにホームインした。
実は、インフィールド・フライ成立時点で打者はアウト。その後のプレーはタッチがなければアウトにはならないのだ。またもや延長戦かと皆が思った瞬間、三塁コーチボックスにいた石井琢朗コーチが猛然と抗議。野間の得点でサヨナラ勝ちという結末だった。大瀬良は待ち望んでいた今季初勝利をドタバタの末につかみとった。