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「柏との『悪縁』があるのは確か」
韓国勢はレイソルの何を恐れるのか。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/24 16:30
FWの工藤壮人は厳しいマークに晒されたが、身体を張ってボールを争うシーンも見られた。この覚悟が、柏の強さの秘密なのかもしれない。
「ぶつかる時にはぶつかる」という感覚。
DFの鈴木も「球際のところは意識的に厳しく行っている」と証言する。
「韓国のチームは、セカンドボールの競り合いなどで体を投げ出してくる。自分たちが苦しい時間帯には、そこでやられている。でも攻撃に転じた時、そこを恐れずに前を向いて向かっていけば、ビッグチャンスになる。もちろんワンタッチ、ツータッチのパス回しで前を向ければいいんだけど、ぶつかる時にはぶつかる。そういうところの感覚をウチの選手たちは掴んでいるんじゃないかと思う」
やりたいことをやるために、自分たちを変化させる。柏にはそういった強さがある。この試合の前日、浦和レッズに勝利した水原三星の重鎮ヨム・ギフンがJリーグ勢の弱点をこう口にしていた。
「Jリーグのチームに対しては、こちらが積極的にボールを奪いに行く時間帯を定めれば勝機を見出せる」
つまり、韓国側からは「潰そうと思えばいつでも潰せる」と見られているということだ。それだけに、柏の「正面突破」が余計に際立った。
「やり方」にこだわらないダブルスタンダード。
ただし、これはあくまでホームゲームでの話。
柏は「正面衝突」だけではなく、別の状況ではもっと極端なことをやり切る引き出しも持っている。22日の全北戦後、工藤壮人、鈴木は口を揃えてこんなことを言っていた。
「今回のグループリーグ首位突破のなかでは、大会初戦(2月24日)、全北とのアウェーゲームの結果が大きく作用した」
この試合の柏は、相手のチェ・ガンヒを「まさかの3バック」と驚かせるほどの守備的な布陣を敷いて相手の猛攻を凌いだ。結果、0-0で引き分けて勝ち点1を獲得。両選手はこの試合をこう振り返った。
「この大会での戦い方を確認できた。あの試合が一番プレッシャーが強くて、なかなか自分たちのやりたいことを出せない状況だった。いままでACLの経験のなかった選手も、ACLでの相手のフィジカルコンタクト、攻撃の強さというものが分かったと思う」(工藤)
「初戦は守りきった。そういう布陣を敷いてやりきった。アウェーということもあったので。グループで一番手ごわい相手に勝ち点3を与えず、こちらが勝ち点を持ち帰れたことは大きかった」(鈴木)
はっきりとした「ダブルスタンダード」だった。柏のこの姿は、「自分たちのやり方にこだわりすぎて自滅する」という日本サッカーの近年の課題に対する痛快なカウンターパンチだ。先のブラジルワールドカップでの日本代表の姿も思い出される。