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今なぜ柴崎岳が鹿島のキャプテンに?
指揮官が与える英才教育の最終試験。
text by
田中滋Shigeru Tanaka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/14 10:50
日本代表でも、まだキャップ数は少ないながら3ゴールを決めている柴崎岳。海外への意欲を隠さない男だが、今はキャプテンマークを巻いて鹿島のためだけにプレーしている。
柴崎「俺らが2人で引っ張っていくぞ」
ピッチ外でも変化が起きている。明治安田J1リーグで今季初勝利となった4月3日の鳥栖戦では、ピッチに出る直前、柴崎は昌子源に「俺らが2人で引っ張っていくぞ」と語りかけたという。さらに、ロッカールームで円陣を組む前にメンバー外の選手たちにむけて「一緒に戦って欲しい」と訴えていた。プレーや態度で示してきたこれまでとはがらりと変わる重い言葉を、キャプテンとしてチームメイトに伝えるようになっていた。
その言葉を受け取った赤崎秀平は、なぜこのタイミングで監督が柴崎にキャプテンを託したのかがわかるという。それは、年代別日本代表からの仲間として、常に近くで柴崎を見つめてきた赤﨑にしかわからないことだったかもしれない。
「岳に対しては、みんな本当に尊敬しています。練習に対しても試合に対しても、誰よりも自分に対してストイックになれる選手だと思う。誰もがキャプテンをやることに異論はない。でも去年までは、岳には性格的に孤立しがちな部分も若干あった。だから、キャプテンをやることによって、岳が成長できるポイントを監督がまた提供したのかなと思います」
トニーニョ・セレーゾ監督は、チームの中心として自覚を強め、日本代表でも飛躍しようとする柴崎が迎えている環境をとらえ、「いまキャプテンを託すべきだ」と判断したのだ。
「彼が選手としてだけでなく、もっと人間として成熟するきっかけになると思う。彼にとってはいろんな意味でいい経験になるのではないかと思います」
視線を落とさず、チームの先頭を歩いていく。
4月12日、新潟との試合が1-1のまま終了すると、柴崎は腰に手を当てて少しの時間下を向いた。しかし、ふーっと息を吐くと、すぐに顔を上げた。
新潟の守備を崩しきれず勝点1に終わった悔しさを胸にしまい、鹿島の選手たちがつくる列の先頭に立ち、審判団や新潟の選手たちと健闘をたたえ合う握手を交わす。応援してくれたサポーターに応えてピッチを一周する間も、肩を落とすチームメイトもいるなかで視線を落とすことなくスタンドからの声に手を振っていた柴崎。そこには、チームの先頭に立って歩く新キャプテンの姿が確かにあった。