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今なぜ柴崎岳が鹿島のキャプテンに?
指揮官が与える英才教育の最終試験。
text by
田中滋Shigeru Tanaka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/14 10:50
日本代表でも、まだキャップ数は少ないながら3ゴールを決めている柴崎岳。海外への意欲を隠さない男だが、今はキャプテンマークを巻いて鹿島のためだけにプレーしている。
技術が未成熟な段階で任せたプレースキッカー。
これまでもトニーニョ・セレーゾ監督は、柴崎の才能を愛する一方で、さらなる成長を促そうと様々な仕掛けをしてきた。セットプレーのキッカーを任せたのもその一つ。チームの中で責任ある立場であることを自覚させるためにも、技術が未成熟な段階からキッカーを任せてきた。
その他にも、淡々とプレーしがちな柴崎に、勝ちたい気持ちを前面に出してプレーすることを望み、高井蘭童通訳を通じてそうした気持ちが湧きあがるように仕向けたこともあった。
昨年の7月12日、鹿島は天皇杯2回戦でソニー仙台と対戦し、PK戦の末よもやの敗戦を喫している。その試合途中、柴崎は高井通訳の言葉に激昂して詰め寄る場面があった。
しかし、それは監督の思惑通り。本来なら試合中にあるべき事態ではなかったが、気持ちを身体で表現するのがサッカーであるなら、勝利への強い気持ちを見せて欲しい、情熱的にプレーして欲しいと、ずっと願ってきた監督の思いが通じた瞬間でもあった。
上下動を繰り返し、レオ・シルバとやりあうまでに。
そして今季、柴崎のプレーは凄みを増している。ゴールに近いポジションの選手であればつねにゴールを狙うことで自分の存在を示すことができるが、柴崎のポジションは3列目に位置するボランチ。そこから頻繁にゴール前まで顔を出すことは並大抵の運動量ではない。
たとえパスが出ずとも、味方をフリーにするために囮になることも厭わず、前線に顔を出すことを繰り返す。さらに、4月12日の新潟戦ではレオ・シルバに一歩も引かず、逆に彼からボールを奪い取るシーンさえ何度も見せていた。
それは、柴崎自身が「5年目を迎えて、昨シーズンまでとは違った立ち位置で臨みたいと思っています。自分がチームの中心だということを最大限に自覚して、周りの期待もチームの期待もすべて受け止めてチームのためにプレーするという特別な思いがあります」と、開幕前に述べていた言葉通りのプレーと言えるだろう。