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売却騒動に解任問題の迷走ミラン。
本田圭佑が好機に決めていれば……。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2015/03/17 12:00
終盤に逆転を喫したチームに、本田圭佑は「それが今のミランの弱点」と語っていた。
ピッチ外で喧噪の度合いを増しているミラン。
前節ベローナ戦の前後から、ミランとインザーギの周囲は一気に喧騒の度合いを増している。
ベルルスコーニ家が、所有するミラン株式の一部をタイ人実業家へ売却する仮合意に至ったとする一報が打たれ、一般有力紙『ラ・レプブリカ』や経済紙『イル・ソーレ24オーレ』までもが、ロスチャイルド・グループの介入と国外投資家による買収の可能性を報じ始めた。
ミランのフロントにとって、シーズンの最優先事項はもはやEL枠獲得ではなく、インザーギを監督職に据えたまま今季終了までソフトランディングさせることだとされている。来季新体制で仕切り直しを図りたいフロントにとっては、解任のタイミングとしてその方が好都合だからだ。
来季の後任候補には、低予算で勝負強いチームを作り上げたエンポリの現監督サッリの名前も急浮上している。
指揮官とフロントは、腹の探り合いをはじめてしまった。
「ミランは自分を騙し打ちするような真似はできないはずだ」と、インザーギもフロントへ牽制を始めている。指揮官とフロントが腹の探り合いを始めたチームが、残りの試合で機能する可能性は低いといわざるをえないだろう。
それ以前に、フィオレンティーナ戦の敗北により、インザーギが土曜日のカリアリ戦でもミランのベンチにいられるかはまったくの未定。
「今夜、ミスがあったとすれば2点目を取りに行った交代だ」
試合後のインザーギは、本田を下げ、チェルチを投入した交代策を悔い、肩を落とした。
自身の4-3-3へのこだわりをなお強調しながら「(今すぐに結果は出なくても)現在のプレースタイルを続けていくことが大事。この悲しい結果から再出発だ。パフォーマンスは悪くなかった」と続けたが、前向きなはずの言葉に力はこもっていなかった。
「残念、残念だ」と振り絞るように続けた後、「ゴール前でもう少し気迫を見せる必要があった」と唇を噛んだ。
あの12分のチャンスを本田が決めていたら。
フィレンツェで束の間見た“今季好調だった頃のミラン”をインザーギは、もう一度見ることはできるだろうか。