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売却騒動に解任問題の迷走ミラン。
本田圭佑が好機に決めていれば……。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2015/03/17 12:00
終盤に逆転を喫したチームに、本田圭佑は「それが今のミランの弱点」と語っていた。
最少リードの不安に駆られたインザーギは……。
74分、FWメネズから右サイドでボールを受けた本田は、そのままエリア内に切り込むかと思われたが、十分タメを作り、ファーサイドのゴール左前へ走り込むメネズを狙うプレーを選択した。だが、雨中の守備で疲労が蓄積していたのか、クロスはふわりと力なく外れた。
最少スコアのリードで不安にかられたインザーギは、2点目を取りにいくことを決め、81分にFWチェルチを投入する。
フィオレンティーナ時代の不遜な態度によって今も憎まれるチェルチへのブーイングが降り注ぐ中、本田は、10年前に中田英寿がヴィオラ色の10番を背負ったグラウンドを後にした。
本田交代後に、フィオレンティーナが逆転。
直後の83分、ミランは左サイドをMFホアキンに破られ、DFロドリゲスのへディング弾で同点に追いつかれる。
慌ててDFボネーラを投入して守備固めに入ったが、勢いづいたフィオレンティーナを止めることはできず、89分にはMFホアキンによって逆転ゴールを決められた。
インザーギは、90分に4人目のFWとなるパッツィーニを入れたが、稚拙な交代策は彼らにゲームプランが存在しないことを証明したようなものだった。
6分のロスタイムの間に、MFホアキンはFWババカルへピンポイントのクロスを上げ、再び得点機をきっちり作った。気の抜けたミランの中堅・若手4人のFWより、肝の据わった33歳のベテランドリブラーの方が何倍もゴール前の怖さを持っていた。
強い雨の中でも嘘をつかない、本物のテクニックを備えていたのは、フィオレンティーナの選手たちだった。
「今日、俺たちはスピリットと度胸をぶつけたのさ」
同点弾アシストと逆転ゴールを決めた殊勲のホアキンは、試合後、精悍な表情を崩さず、雨と汗の滴を拭った。