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山岸範宏、初の「アウェーの埼スタ」。
劇的ヘッド以上の“最高”を求めて。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/03/13 10:30
山形の守護神としての姿がすっかり板についた山岸範宏。埼玉スタジアムのサポーターは、13年以上ともに戦った男の凱旋を、どんな歓声で迎えるのだろう。
劇的な昇格と天皇杯準優勝を経て、J1残留に挑む。
しかし、浦和は2014年のシーズンを前に、西川周作を獲得。山岸は、ベンチ入りさえままならない状態で前半戦を終えた。そんなときに山形からの獲得オファーが届き、期限付きでの移籍が決まった。
普通の選手ならば、これだけ実戦機会から離れていたらすぐに実力を発揮することは難しい。
だが、山岸は違った。
浦和時代からいつレギュラーを奪われるか分からない、いつチャンスが来るか分からないというポジション争いに身を置いていたからこそ、日常の準備の大切さが身に染みている。常に「良い準備」ができていたからこそ、加入して半年でJ1復帰の立役者になることができた。
昨シーズン終了後には完全移籍が発表され、2015年シーズンから正式に山形の一員となった。背番号も慣れ親しんだ1番に決まり、石崎信弘監督からチームキャプテンにも指名された。
天皇杯の決勝まで進出したことからも、現状のチームが持つ勢いは大きい。しかし現実には、J2の6位からプレーオフを経て昇格したクラブだ。ここ2年連続で、大分トリニータ、徳島ヴォルティスといった同じような昇格劇を見せたチームがシーズンの早い段階で降格決定の憂き目にあっている。それを踏まえた上で、山岸はシーズンを見据えて言う。
「チームの周りに期待感や高揚感があるのは感じますから、それをネガティブに抱かないようにして戦うこと。僕らはJ2の6位から上がったチームですから、全ての試合がチャレンジ。一つ一つの勝利を求めることを続けた上で、J1残留が一番現実的な目標だと思います。クラブがJ1に定着して戦い続けるために、今シーズンが非常に大切です」
初体験の「アウェイの埼スタ」に思うこと。
開幕して間もない第2節、3月14日は山岸にとって対戦相手として浦和のホーム・埼玉スタジアム2002に乗り込む初めてのゲームとなる。浦和は、今季から西川が背番号1を背負っている。奇しくも、新旧の背番号1対決が実現することになった。
「楽しみな試合であるのは確かですね。アウェイの埼スタは自分にとって初体験だから、インパクトがある試合になるのかなと想像しています。特別な感情を持つのは自然なことだけど、それを出し過ぎずに自分らしさを出すことですね」と、山岸は静かにゲームを見据えて言う。