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山岸範宏、初の「アウェーの埼スタ」。
劇的ヘッド以上の“最高”を求めて。
posted2015/03/13 10:30
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
「よく、あのヘディングが『今までのキャリアで最高の試合?』って聞かれるんですよ」
2月のJリーグプレスカンファレンスで久々に会った山岸範宏は、どちらからともなくあのゴールについて切り出した。
昨年11月、モンテディオ山形とジュビロ磐田が戦ったJ1昇格プレーオフ準決勝で、敗退目前となった試合終了間際に迎えたコーナーキックのチャンスに攻撃参加して決めた、あまりにも芸術的で劇的なヘディングシュート。サッカー界には、“山の神”という言葉が駆け巡った。
そもそも、モンテディオというチーム名自体がイタリア語で山を意味する「monte」と、神を意味する「dio」を組み合わせたものだ。それに加えて“山”岸という苗字。“山の神”という呼称が生まれるのも自然の成り行きだった。
山岸の一撃で勝利をもぎ取った山形は、プレーオフ決勝でもジェフユナイテッド千葉を破り、4年ぶりのJ1復帰を勝ち取った。天皇杯でも決勝進出を果たした山形が、2014シーズン終盤戦のJリーグの顔だったことは間違いない。
「キャリアハイはこれから先にあると思っている」
山岸のゴールはJリーグ22年の歴史の中で、GKが挙げた7ゴール目になった。しかも、過去の6ゴールはPKやフリーキック、パントキックが風に乗ったものなど全てが足によるもの。ヘディングでのゴールは史上初である。
それだけに、冒頭のような質問が多くのメディアから浴びせられたのだった。5月に37歳になる年齢も一因だろう。しかし、山岸はあっさりとそれを否定する。
「あれが、キャリアの中でインパクトのあるゲームだったのは確か。でも、キャリアハイはこれから先にあると思っている。最高のゲームはこれから作るものですよ。満足したらそれで終わりじゃないですか」
聞いた瞬間、実に山岸らしいと感じた。その言葉の背景には、彼の歩んだキャリアと選手として根本に持つ考え方がある。