MLB東奔西走BACK NUMBER
薬物使用のA・ロッドが現場に復帰!
“ヒール”の紳士的態度は本物か。
posted2015/03/08 10:35
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph by
Getty Images
メジャー球界の中でも当代きっての“ヒール”がグラウンドに戻ってきた。
違法薬物使用のため162試合の出場停止処分を科せられていたアレックス・ロドリゲス選手が2年ぶりにヤンキースのキャンプに参加。3月4日にはオープン戦ながら2013年9月25日以来となる試合への出場も果たした。
キャンプ地に姿を現した彼に対し、ファンの反応は意外にも温かかった。
初日からファンから声援を受け続け、オープン戦の第1打席でも、わずかなブーイングが応援にかき消されるほどだった。
結局、久々の実戦で3打席に立ち、レフト前ヒット、ショートゴロ、四球と2度の出塁に成功。ファンを喜ばせた。
「長年スプリングトレーニングで味わってきたものと変わらず楽しかった。自分がずっと大好きだった試合に出場できて、最高の気分だ。バットに当たって良かった。ヒットまで打てるとは嬉しい誤算だった。そんなに思い切り振ったわけではなかったんだ。どん底を経験しただけにこうやって声援を浴びるのは、嬉しい驚きだね」
試合後のロドリゲスも久々の試合を満喫した様子だった。
だが、ここまではあくまでヤンキースのキャンプ地の中で起こった出来事であり、これまで彼がしてきたヒールたる所以の“悪行”を考えれば、ヤンキース・ファン以外の人々が同じように受け入れてくれるとは到底思えない。
メジャー球界を揺るがした、一大薬物スキャンダル。
騒動の始まりは2009年だった。
すでに選手たちの禁止薬物使用が深刻な問題として表面化していた中、『スポーツ・イラストレイテッド』誌が、2003年の検査で104人の選手からステロイドの陽性反応が出ていて、そのうちの1人がロドリゲスだったと報じたのだ。
それまで一貫して使用を否定していたロドリゲスは報道後わずか数日で発言を180度転換。マリナーズからレンジャーズに移籍した2001年から3年間禁止薬物を使用していた事実を認めたのだ。
だが、その発言は「自分は愚かでナイーブだった」と罪を認める一方で、「当時は今とは考え方が違っていた」と、その頃の風潮に乗っただけともとれる、弁解じみた発言もしていた。
この発言ではあくまで“一度きり”の過去の過ち、と釈明していたにもかかわらず、実際には、そうではなかった。
その後もロドリゲスの薬物疑惑は次々と浮上する。