スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大器スタントンとイチローの技。
~マーリンズを待つ奇跡の化学反応~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2015/03/07 10:35
同じ外野手のイチローと談笑をするジャンカルロ・スタントン(中央)とマルセル・オズナ。マイク・レドモンド監督も「イチローのような選手と一緒にプレーすることで学ぶことが多い」と、若手への好影響を期待している。
スタントンにとっても、イチローはまさにお手本。
実際、今季のマーリンズには、20代の有望な若手がずらりとそろっている。投手のホゼ・フェルナンデス(開幕時22歳)、内野手のアデイニー・エチャバリア(25歳)、外野手のマルセル・オズナ(24歳)とクリスチャン・イエリッチ(23歳)。スタントンと同世代の彼らが一斉に活躍すれば、ポストシーズン進出もけっして夢ではないはずだ。
イチローの加入も、スタントンには大きなプラスだろう。スタントンはこれまで、3割を打ったことが一度もない。パワーはすでに証明済みだけに、彼としても、打率を上げて守備と走塁を向上させることは当面の大きな課題といってよい。
その点、イチローは素晴らしいお手本だ。野球のスタイルは大きく異なるにせよ、イチローの安打製造能力、そして守備と走塁の技術は、スタントンとしても喉から手が出るほど学びたいものにちがいない。そんなイチローの流儀を、スタントンはどこまで吸収できるか。そしてどこまで、先行者ミゲル・カブレラの域に近づけるか。イチローの大リーグ通算3000本安打の達成はもちろん重要だが、彼が次代の大スターになにを伝えられるかというテーマも非常に興味深い。スタントンの打率が3割を超えたら、周囲は低い声でイチローの名をささやくかもしれない。