「年齢を考えたとき、もう時間がないんじゃないか」

――獲得オファーは選手としての価値を認めてもらった証ですからね。

「だから、そういう心の準備は出来ていたのかなと。短いサッカー選手人生のなかで、移籍という経験をしたいという想いがあったのだなということを、実際移籍を果たした今、すごく感じています。環境を変えることへの不安や恐怖心はあったけれど、同時にその変化に対して、自分がどう対応し、どういう風になるんだろうと“楽しさ”というか、期待が大きいですね」

――過去にも何度か、移籍話がメディアを騒がせてきましたが、その時は残留を選択。今回、移籍を決断した理由は？

「純粋にもう一度J1でプレーしたいという気持ちだけです。もちろんジュビロでJ1復帰をめざし、それを果たすべきだったとも思います。それだけの責任が僕にはあるから。でも自分の年齢を考えたとき、もう時間がないんじゃないかという気持ちもありました」

「ジュビロでプレーするのは、一番楽な道なのでは？」

――昇格プレーオフ敗退から1カ月くらいで移籍を決めたわけですが、昨季J2で戦いながら、『昇格できなければ移籍を』という風に考えることはありましたか？

「それは一切ないです。だから『ずっと移籍しようと思っていたんじゃないのか？』と言われたりして、ショックでしたね。シーズン中は目の前の試合のこと、どうにかチームが勝つためにということしか考えられなかった。それでもプレーオフに負けて、不甲斐ない結果しか残せなかった。

　そこで初めて今後のことを考えてみたときに、移籍という選択を模索しようと思ったんです。実際、そんな成績の僕にJ1からオファーが来るかどうかもわからないけれど、探してみようと。J1へ移籍できるチャンスは、これが最後かもしれないと。だからチャンスがあれば『勝負してみよう』とすぐに決断できると思っていたんですが、FC東京から声をかけて頂いたときは悩みましたね。移籍するというのは、自分のわがままなんじゃないかとか」

――名波浩監督をはじめ、フロントにはお世話になった先輩方が名を連ねていますしね。

「先輩だけじゃなくて、スタッフ、チームメイト、サポーターやファン……いろんな人たちのことを考えました。でも、逆にそういう育ててくれた人たちのもとから、出ていくべきだと思ったのです。温かく見守ってくれる居心地の良い環境にいてはいけないと。自分にとってジュビロでプレーすることは、一番楽な道を選ぶことなんじゃないのか？　慣れ親しんだ環境に甘えているんじゃないのかなって」

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