「2トップと1トップ下という形は楽しい」

――チーム戦術と自分のスタイルとのすり合わせは、容易いことではないですよね。新しいチームメイトと分かり合わなければならないし。

「チームのサッカーを表現できないと、試合には出られない。でも、それが完璧にできたとしても、それだけだと、違う選手が来たらポジションは奪われる。チームとしての仕事をしたうえで、他の選手が真似できないことをやっていかないといけない。FC東京のサッカー、チームメイトの中で、もっと何かできる、やらなくちゃいけない。自分のプレーの幅を広げなくちゃという想いを毎日感じています。今日の練習も悔しい感じだったし。なんで、もっとできないのかって」

――開幕まで1週間を切りました。今は何が足りないのでしょうか？

「久しぶりの2トップとトップ下という形だから、3人でいろいろできる楽しさがあるんですが、シュートをもっと打たないとダメだなと。そういう場所にどんどん顔を出していかなくてはならない」

――プレシーズンマッチでは1ゴール。これは多いですか？　少ないですか？

「決められたことは良かったとは思うけれど、それほど深くは考えてないです。公式戦で決めることが重要だから」

プロでは高校と違って、先輩は卒業しない。

――16回目の開幕を前に、新たな決意を。

「自分のわがままを通すような形でジュビロを出たのだから、それに見合う成長を遂げなければいけない責任というか、覚悟みたいな気持ちはあります。結果を残せなければ、先はないと。でも考えてみると、そういう想いはプロ3年目くらいからずっとあるんですよね。本当は1年目からその気持ちを持っていなくちゃいけなかったけれど、1、2年目は高校時代の延長みたいな気分で『いつか試合に出られる』と思っていた。でも、プロ選手は入れ替わらないんだと気づいたんです（笑）」

――先輩は卒業しないと（笑）。

「はい。だから本当に必要とされる選手で居続けなければならない。毎シーズンというか、毎日毎日が崖っぷちに立っていると考えてきました。今年もそこは同じ。移籍をきっかけに自分が変われる、変わらなければいけないとも思ったけれど、やっぱり俺は俺なんだという風に感じています。

　成長という変化は必要だし、そこは追求していくけれど、自分の土台というか、軸は同じだなと。24時間サッカーのことばかり考えているし、周りからは窮屈そうに見えるかもしれないけれど、僕自身はそれが楽しい。現役としての残り時間が少ないことはわかっているけれど、先を見ず、今日一日精いっぱい力を尽くすだけです。

　でも、練習メニューも変われば、周りの選手も代わる。新しい環境は新鮮な刺激をたくさん与えてくれるので、自分の成長の可能性が広がるような期待はあります。そのチャンスをくれたFC東京のために、チームの力になり、『前田を獲って良かった』と思ってもらえるように。月並みですけれど、がんばります」