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イチローが「この2年欲してきたもの」。
マーリンズ移籍、最大の理由とは?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2015/02/06 16:30
1月29日、都内で行なわれた入団会見にて、イチローは用意されたお茶を何度となく口にし、渇きを潤していた。
不完全燃焼だったシーズンへの、魂の叫び。
結局シーズンを通してヤンキースに在籍したものの、イチローの待遇が大きく変わることもなく、先発出場は指名打者の1試合を含めて95試合のみ。時には代走や守備固めとしての出場もあった。
つまり公式戦最終戦後に発したあのイチローの言葉は、心身ともに不完全燃焼に終わったシーズンへの魂の叫びだったのだろう。
またイチローは会見で「この2年間欲してきた」という言葉を発している。
ヤンキースとの2年契約を結び周囲を驚かせた2013年シーズン。この年は150試合に出場したものの、先発出場は128試合に留まっており、シーズンを通してだんだんと首脳陣のイチローに対する評価が薄れていった年になったと言える。ヤンキースがオフに大型補強を断行したのもその延長線上にあったのだろう。
記録は大切だが、それがすべてではない。
ヤンキースでの2年間、彼が欲していたもの。それこそがマーリンズがイチローに示した「選手としてあなたが必要である」という熱意であり、彼を衝き動かす“原動力”なのだ。それは次の発言からも伝わってくる。
「数字(3000安打)はもちろん大切なものです。これがなくては現役を続けていくことはできないと思います。ただそれがすべてではないということが、はっきり言えると思います。もちろん、チャンピオンになること、節目の数字をクリアすることは大切なことではありますけど、その目標があるからという理由だけでプレーを続けるわけではありません」
いわゆる「心技体」の「心」の部分で、ここ数年味わえなかった充実感を今のイチローは感じているわけだ。