必勝を期した4-4-2の新戦術。

　日本代表がUAEに敗れ、本田のイタリア復帰が早まったことを知った日、インザーギが「ケイスケは(再合流後も)休みたいなんて言うわけないさ！」と叫んだのも無理からぬ話だ。再帰国後、コッパ・イタリアのラツィオ戦で復帰した本田は、途中出場ながら攻撃の形を作る働きを見せていた。

　崖っぷちのインザーギは、必勝を期したパルマ戦に新戦術4-4-2をぶつけてきた。

　1月の移籍市場で、それぞれローマとスパルタク・モスクワから獲得したばかりのFWデストロとDFボッケッティを先発させ、復帰の本田には2列目の右サイドが与えられた。

　変則的布陣に、試合開始直後から本田もチームも混乱した。不慣れなポジション取りで、とにかくボールが回らない。17分にFWメネズのPKで先制したが、24分のセットプレーでパルマMFノチェリーノに押し込まれ、同点にされた。

　給与未払い騒動やカッサーノ退団で大揺れのパルマは、チーム状態でいえばミランよりも遥かに悪い。その最下位チーム相手にすら主導権を握れない展開に、インザーギは手を打った。

ぎこちないままに奮闘し続けた本田。

　30分経過を前に、ミランはFWデストロを1トップに置く4-2-3-1へスイッチ。本田はFWチェルチと左右を入れ替わり、2列目の左サイドという新しいポジションについた。

　ぎこちなさは相変わらずだったが、粗削りながらもミランと本田はパルマのゴールに向かった。

　32分にDFアレックスのFKが左ポストを直撃し、4分後にはFWデストロのへディングがクロスバーを襲った。

　本田も40分に、DFザッカルドのクロスを受けた後、絶妙なパスをゴール前のFWデストロへ通している。その直前、パルマのカウンター攻撃に晒された自陣へ猛ダッシュで戻り、FWバレラのシュートブロックに入る献身的プレーも見せている。

　左サイドに置かれた本田は窮屈そうだったが、それでも攻守に献身した。それは、12月以前と何ら変わらない10番の矜持だった。

【次ページ】　得点シーンはほとんど個人技だったが……。