得点シーンはほとんど個人技だったが……。

　後半12分、ミランは、FWメネズのゴールで勝ち越しに成功する。右サイドを攻略したFWチェルチのパスを受けた左足シュートが、ゴール左隅に低く決まった。

　31分には、やはり右サイドをドリブルで突破したメネズのクロスを、オーバーラップしたDFザッカルドが左足でダイレクトに合わせて、チーム3点目。

　得点シーンはどれも、ほぼ個人技によるものだった。

　イタリアSKY解説者の前主将アンブロジーニは「メネズとチェルチの個人技が生きたのは、左サイドで本田が泥臭い仕事をやり遂げたから」と指摘した。

　復帰した10番は、2列目の左サイドという新ポジションでもがいた。後半途中から出場したMFエッシェンとポジションがかぶる場面もたびたびあった。

　10番の疲弊と引き換えに、ミランは渇望していた白星を手に入れたのだった。

「うちのプレーは、本当に、本当にひどい！」

　ミランはパルマを圧倒できたわけではない。

　新戦術で臨んだゲームの内容は、インザーギが試合中に、傍らの副監督タソッティに向かって「うちのプレーは、本当に、本当にひどい！」と何度も声を荒らげたほどで、決して褒められた出来ではない。

　個人のミスが目立ち、中盤は分断されたまま。攻守バランスの不一致は、目を覆いたくなるほどだった。

　スコアこそ2点差をつけての勝利だったが、手放しで喜べる内容でなかったことは、選手たち自身も痛感したはずだ。

　試合後、2ゴール1アシストのFWメネズも「ここまで勝ち点を失い過ぎた。これから1試合ごとにベストを尽くす。何かを信じられるようになるのはそれからだ」と険しい目つきで語っている。

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