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柴崎岳がUAE戦後にもらした“本音”。
取材エリアを素通りしなかったわけ。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/01/26 11:55

柴崎岳がUAE戦後にもらした“本音”。取材エリアを素通りしなかったわけ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

柴崎岳、22歳。今大会中には本田圭佑からFKを譲られるなど、若手ながら一目置かれる存在である。

遠藤についての質問に、負けず嫌いが顔を見せた瞬間。

 昨年11月、大阪での練習後のことだった。

 2日前に豊田スタジアムで行なわれたホンジュラス戦で、代表復帰した遠藤がハイパフォーマンスを披露した。柴崎も試合終盤に途中交代でピッチに登場したが、時間も短く大きなアピールには至らなかった。

 連日問われる、遠藤との比較。この時、柴崎は少しだけうんざりしていたのかもしれない。「遠藤選手は参考になる?」という質問に対して、次のように答えたのが印象的だった。

「参考になるというよりも、自分も試合に出た立場なので、もっと周りと連係を上げていかないといけない。ヤットさんは経験豊富な選手。もちろん若手の自分にとっては勉強になりますが。どのあたり? 細かいところは、僕はメディアには言わないので」

 日本屈指のMFの存在が、彼にいい刺激を与えていたのは間違いなかった。と同時に、クールに見えてその内面は、実は相当な負けず嫌いであるとも聞く。そんな性格が、垣間見えた瞬間だったかもしれない。

UAE戦でも、柴崎の動きは際立っていた。

 UAE戦。日本は連戦の影響もあり、前半から動きが重たい選手が何人もいた。

 遠藤もその一人だった。彼は引いて守る相手の守備ブロックの中でも、あえて敵の隙間に入ってパスを受け、さばこうとしていた。ただ動き自体は多くなく、過去3試合で見せていた裏への抜け出しなどのバリエーションに富んだプレーに比べれば、この日は低調と言わざるを得ない動きだった。

 54分、その遠藤に代わってピッチに入ったのが柴崎だ。

 硬直したチームにスムーズな流れを取り戻すために。柴崎は、眠った味方を叩き起こすように、自ら動き回ってはボールに触っていった。

 同じく途中出場していた武藤と高い位置から果敢にチェイシングを仕掛けたかと思えば、今度はDFラインに近づいて味方からボールを引き出し、そして縦横にパス、とボールをスムーズに動かしていく。

 パスを出すだけではない。すぐに動き直してパスコースに顔を出し、多くの選手をフォローする。中央、左右とさまざまなエリアで味方の選手とのプレーに絡み、必死にUAEを突き崩そうとしていた。

 81分、その瞬間は訪れた。

 中央でボールを持った柴崎が、ゴール前にいた本田に球足の速い縦パスを入れる。本田はワントラップすると、走りこんでくる柴崎にすぐにリターン。鹿島と同じ背番号20を背負った日本の若きMFは、右足インフロントでコースを狙うダイレクトシュートを放った。

 ボールは鋭く曲がり、ゴールの左サイドネットに突き刺さる。喉から手が出るほど欲しかった同点弾。お膳立て、フィニッシュ、すべてが柴崎の仕事だった。

【次ページ】 取材ゾーンを素通りすることが多い柴崎がこの日は……。

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