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青学大の“三代目山の神”誕生秘話。
神野大地と原監督が出会った5年前。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2015/01/05 11:10
最優秀選手として金栗四三杯を受賞した神野大地。「大地」という名前は、ソウル五輪の時に背泳ぎで金メダルを獲得した鈴木大地から父親が命名した。
5位でも、8位でも喜びを爆発させる青学大の選手たち。
このリクルーティング成功の要因は、原監督のパーソナリティに尽きる。監督は会社員の経験もあり、マネージメントを非常に重視するが、それに加え、才能豊かな高校生を魅了する「人柄」が武器だ。
高校生の視点に立てば、青学大は他の大学とはキャラクターが違う。箱根駅伝は1位と10位の学校しか喜ばない、不思議でシビアな大会だが(2位と3位の学校は喜んでいいはずなのに、深刻な表情を浮かべる)、青学大は5位でも8位でもいつも喜んでいた。
監督の人柄が、部の雰囲気を醸成したのである。
選手に対する授業料の優遇や、奨学金の整備など環境面で、青学大は他校と比べて恵まれているわけではない。それでも選手を引き付けるのは、監督が部の魅力を作ってきたからだ。
原「見るのは明るくて、表現力が豊かなこと」
それにしても、神野に対し高校2年の時点で声をかけていたとは驚きである。まさに「青田買い」だ。
リクルーティングを成功させるためには、どんな選手が欲しいのか、それを明確にしていなければならない。原監督は人材の見極めで、どんなところに注目しているのか。
「まずは、青山学院というスクールカラーにふさわしい人材。明るくて、表現力が豊かなこと。話しかけてるのに、うつむいて満足な答えが返ってこないようじゃ、大学に入ってからも伸びません」
走り、メカニックの面はどうか。
「神野みたいに走りが大きいとか、軸がブレないという選手は目を引きますね。あと、肩幅が広いとか、胸板が厚いとか、そういう選手がいいです」
骨格が競技成績に直結するということなのか?
「いや、私の好み。なんだかドカーンとしてて、身体が大きい方がいいじゃない。胸板が厚いと、酸素をいっぱい取り込めそうだし(笑)」
このユーモアが、学生を安心させるのだと思う。
原監督の就任から11年。ついに、「青学時代」が到来した。