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ディナターレがセリエA通算200点。
“傍流”の男が達成した偉業の真価。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2014/12/11 10:40

ディナターレがセリエA通算200点。“傍流”の男が達成した偉業の真価。<Number Web> photograph by Getty Images

ウディネーゼではキャプテンを務めるディナターレ。170cmと小柄ながら、スピードと繊細なテクニックで得点を量産。

ユーベのオファーも、広州恒大の高額オファーも断った。

 今年9月、故郷ナポリで父サルバトーレが闘病生活の末に死去した。母ジョバンナも7年前に他界している。

 兄弟のうち、唯一人故郷を離れているディナターレは、キエーボ戦で偉業を達成した瞬間、亡き両親、そして妻と子供たちといった家族へ思いを馳せた。

“ヌーメロ・ウノ”を目指すことなく、ミラノやローマといった誘惑と喧噪の多い都会を避け、仕事と家族を大事にできるサッカー人生を選んだからこそ、ディナターレは自分自身であることができた。

 実は4年前の夏に、ユベントスからのオファーがあった。大方のイタリア人であれば、抗うのが困難な貴婦人からの誘惑をディナターレは断った。

 自らの気骨を示し、“ユーベにNOを突き付けた男”の勲章を得たディナターレは、今年の夏には多額のサラリーが約束された広州恒大からのオファーも蹴った。移籍の盛んな21世紀のサッカー界にあって、鶏口牛後を貫く。

「後悔はしていない」と語った最近のインタビューで「国外で唯一プレーしてみたいと思ったクラブは、リバプールだけ。あのスタジアムと独特の雰囲気の中で、一度プレーしてみたかった」とも明かした。

経営するサッカースクールに掲げられた個性的な一文。

 昨季途中で引退発言したが、すぐに撤回した。

「11歳の息子に引退すると話したら、信じてもらえずに大笑いされた」

 今季終了後の去就は白紙だ。だが、やらないと言い続けてきた監督業についても「やっぱりするかも。4-3-3がいい」と言い出した。

 ディナターレが経営するサッカースクールには、次の一文が掲げられている。

“ご子息がマラドーナだと考えてらっしゃる親御さんは、どうぞお引き取り下さい”

 北イタリアの田舎町にいるいぶし銀ストライカーは、“俺はヌーメロ・ウノではなかった。だが、どでかい仕事はやってのけたぜ”と、次の世代を担う子供たちへ矜持を示す。

 まずはあと半年、ディナターレは、バッジョの持つ205ゴールの記録を抜くことに専念する。その正確無比なシュートテクニックは、今なお凡百の若手FWなど足元にも及ばない。シーズンの後半戦、ウディネーゼの小さな巨人の雄姿を目に焼き付けておきたい。

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