野球クロスロードBACK NUMBER
不変の軸と、開花したリーダー性。
侍J、SBの中心に松田宣浩がいる。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/12/09 10:50
今季は怪我で離脱したものの、最終的に101試合に出場し、打率も3割をキープした松田宣浩。日米野球でも唯一敬遠されるなど、強烈な存在感を放った。
「最低でも日本一」という張り詰めた雰囲気。
2013年は、多くの評論家たちが優勝候補に挙げながら4位に終わった。オフに30億円とも言われる大型補強を敢行したのは、ソフトバンクの本気度を如実に物語っていた。
至上命題どころか「最低でも日本一」。そんな張り詰めた雰囲気すら漂うチームで新選手会長に任命されたのが松田だった。
就任当初、彼は選手会長としてこんな“所信表明”をしていた。
「選手全員が同じ方向を向く。これが一番難しいことだと思うんですね。でも、そうならなければ優勝できないんです。だからね、春のキャンプが始まる前に、多少は目を吊り上げながらね、『みんな同じ方向を向いて、シーズンではいい勝負をしよう!』とは言いたいと思っています」
中田賢一、ウルフ、スタンリッジ、サファテ、鶴岡慎也、李大浩。他球団で実績を積んだ猛者たちが、続々と移籍してくる。ともに戦う仲間とは言えライバルでもあり、一線級の選手となればプライドも高い。彼らのような新戦力をまとめ上げるのは容易ではなかったはずだ。
選手の協力を得て、プレーに専念できる環境が揃った。
ところが「いざ蓋を開けてみればそうでもなかった」と松田はしみじみと語った。
「最初に、『新しいチームメートがたくさん入ってきたけど、目指すところは一緒やから。ホークスの一員として頑張ろう!』とは言いました。でもね、全然ギクシャクとか、そんな雰囲気なかったですね。
新しく入ってきた選手も、やっぱり日本一になりたくてホークスに来たわけですから、そういうところを分かってくれていたというか。だから、自分からはなんも言うことなかったです。それは嬉しかったし、みんなに感謝しています」
既存の選手は前年の4位という屈辱からの脱却を、新戦力は日本一に貢献するべく力を発揮しよう。シーズンのスタートから同じ思いを共有できたからこそ、選手会長の松田は常日頃から心がける、「元気よく声を出し、プレーでみんなを引っ張る」ことだけに専念することができたのだという。