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沖縄出身の野球選手は大成しない!?
中日・又吉克樹はジンクスを破るか。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/05 10:40
新人王は広島の大瀬良大地に譲ったが、又吉克樹の成績は例年なら十分に新人王に値するものだった。沖縄の期待を背負い、出世街道を一足飛びに走っていけるか。
人懐っこさの裏に、引っ込み思案が?
そういう意味では、沖縄尚学高校時代、'08年春に全国制覇を経験し、さらには東都の名門・亜細亜大学で1年生のときからエースの重責をになったソフトバンクの東浜巨などは、その点心配ないはずだった。しかし入団1年目は3勝、2年目の今季も2勝にとどまっている。
沖縄の選手には、確かに南国生まれ特有の雰囲気がある。又吉もそうで、いつもニコニコしていて、とにかく人懐っこい。スタッフや報道陣に1日に2度も、3度もあいさつをする。
ただ、沖縄人はその人懐っこさの裏に、往々にして引っ込み思案な面が張り付いているものなのだが、又吉にはそれがなかった。
取材でも自分が感じたことを、自分の言葉で、きちんと話す。
「中学、高校と、ほとんど野球を教わってない。それが逆に武器になった。日本に初めてきた外国人と一緒で、固定観念にしばられない見方ができるじゃないですか」
「ギラギラ」というよりは「テカテカ」。
又吉はプロに入るまで、エリートとはまったく無縁だった。中学時代は補欠で、無名の県立高校に進学し、2年秋に「おもしろいボールを投げる」という監督のアイデアで初めて投手をかじった。高校卒業後は、教師になるつもりで環太平洋大学に進む。
高校時代、「まめ」と呼ばれていたように、昔から背が小さく、高校入学時はまだ身長150cmに届いていなかった。すると高校3年秋ごろから成長期が訪れ、大学生になり180cmに到達。それと同時に、高校時代は120kmにも満たなかった球速が、一気に140km台に乗った。
大学卒業後は社会人の誘いを蹴って、独立リーグ・四国アイランドリーグplusに所属する香川オリーブガイナーズへ。入団1年目に劇的な成長を遂げ、独立リーグ史上最高位となるドラフト2位で中日に入団した。
しかし、そうした非エリートの引け目はまったく感じさせない。
「とにかくぶっちぎりの一番になりたい。お金がもらえる選手になりたいですね」
「ギラギラ」というよりは「テカテカ」。どこまでいっても「陽の男」だ。