実は、マドリーはまだ未完のチームである。

　いずれにしても、現在のマドリーにおける「深さ」を追求した縦に速いカウンター志向と、ピッチの「幅」を生かしたクロス志向の両輪がC・ロナウドという希代のゴールマシンを力強く支えている。

　今後、先日の代表戦で負傷した司令塔モドリッチ（クロアチア代表）が長く戦列を離れる見込みとなり、アシスト環境に多少の狂いが生じる可能性は高い。それでも「闘うクラック」として新境地を開拓しつつあるイスコに加えて、ボランチを本職とするアシエル・イジャラメンディらのピースが新しいパズルにフィットすれば、ゴールラッシュに歯止めはかかりそうもない。

　公式戦15連勝というクラブのタイ記録まで打ち立てた現在のマドリーだが、いまだ攻守のバランスに改善の余地を残す未完のチームでもある。理想形、完成の域に達するのはこれからだろう。そうだとすれば、C・ロナウドのゴールラッシュがさらに勢いを増す可能性すらある。最大の敵はケガだろうか。無事にシーズンを終えることができれば、我々は歴史の目撃者となるかもしれない。いや、すでに「生ける伝説」を目の当たりにしている。ただただ、幸運と言うほかない。