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智将マンチーニがインテルに復帰。
“緊縮体制”でも成績を残せるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/11/28 10:40
マンチーニ体制の初陣となったミラノダービーでは、史上初の日本人対決も実現した。
バロンドール受賞者も怪物FWもいない現チーム。
トヒル会長以下、現経営陣の要求はただ一つ、来季チャンピオンズリーグへの切符だ。
しかし、アイドル級の人気を誇り、実績もあるスター監督の招聘は高くついた。リーグ最高額となる来季以降の年俸400万ユーロの資金源は、まだ手にしていないCLマネーであり、トヒル体制となって初めての監督交代は、インテル経営陣にとってもリスクを孕んでいる。
状況としては、アッレグリを解任して人気選手だったセードルフを呼び寄せた昨季のミランにも似ている。就任要請を受けたマンチーニは、「3位獲得は可能」とミッションを請け負った。
しかし現在のインテルは、豪放磊落に敵チームを圧倒できた10年前のチームとはちがう。
ロナウドやフィーゴのようなバロンドール受賞者もいなければ、アドリアーノやイブラヒモビッチのように怪物じみたFWもいない。
当時のチームの豪華な顔ぶれは、“数年後、日本人サイドバックがこのチームのレギュラーになる”と言っても、誰一人信じてくれなかっただろう。
緊縮体制でも成績を出せるか。
かつてのインテルは、戦力補強に湯水のように金を使った。その後マンチーニが指揮を執ったマンCやガラタサライも金満クラブだ。
経営陣や選手の顔ぶれが一変し、予算も半減した今の緊縮体制インテルで、マンチーニは早急に結果を出さなくてはならない。セレクターとしての腕がより試されるのだ。
基本戦術を4-3-1-2に置くマンチーニは、勝手知ったる古巣の練習場で精力的に指導を始めた。守備陣は4バックへ回帰させ、最終ラインの前に強力なアンカーを一人。本職のトップ下と2トップに、前線をワイドに使わせる。
ボールはこねくり回さない。プレーの判断と実践するスピードを上げることが重視される。
就任後の初陣となったミラノダービーでは、旧知のインザーギ率いるミランに先制されたが、61分にMFオビの同点ゴールで引き分けに持ち込んだ。北側ゴール裏席には、「BENTORNATO MANCIO(お帰り、マンチョ)」の横断幕が揺れていた。