プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・菅野智之、2年目の挫折と復活。
在りし日の原貢が語った「原家の血」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/09/29 11:30
菅野智之、ルーキーイヤーにあげた13勝まであと1つ。そしてそれは、ハーラートップを走るメッセンジャーに並ぶ勝利でもある。
「あの日から、空を見上げるようにしているんです」
貢さんが亡くなった2日後の5月31日。菅野はオリックス戦のマウンドに上がり、金子千尋との壮絶な投げ合いの末、7回無失点でマウンドを降りた。
「あの日からいつもマウンドに上がる前と上がってから、空を見上げるようにしているんです」
菅野は言う。
「きっと、じいちゃんが空から見守ってくれていると思った。心強かった」
倒れる5日前、貢さんはさんざん菅野のことを心配した後に、こんなことを言っていた。
「ただねえ、この激しさというのはオレも一緒なんだ。それでどれだけ損をしてきたことか……。でも、やっぱり男っていうのはそういうのもなきゃいかん! それぐらいの激しさがなくちゃ、大事なところじゃ勝てませんよ」
貢さんは、あの日も菅野のことを心配していたわけではなかったのだ。
見た目は優しげだが、原家に流れる激しい血潮を引き継いだこの孫を頼もしく、そして自慢として誇っていたのである。