オフサイド・トリップBACK NUMBER
香川真司を襲った“3つの不運”。
いつか「夢の劇場」に凱旋を。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2014/09/05 10:50
ドルトムントでの練習に合流した香川真司。ギュンドアンらかつてのチームメイトと談笑する姿も見られた。
ユナイテッドでの道を閉ざした三つの不運。
ただし、個人的にはファンハールの発言云々を取りざたするつもりはない。むしろ今、一番強く感じるのは香川の運のなさだ。
ユナイテッド時代の香川は、節目節目で、なぜか運に恵まれなかった。
1シーズン目は、オールド・トラッフォードでのデビュー戦でいきなり結果を出したものの、その後はベンチを温め始める。だが再起を期して臨んだCLのブラガ戦では膝を故障し、長期の欠場を余儀なくされてしまう。
2つ目の不運は、ファーガソンの勇退とデイビッド・モイーズの監督就任だ。モイーズの監督就任が決定した直後、サンデイ・ミラー紙のサイモン・マロックは警告めいた指摘をしていたが、悪い予感は的中してしまった。
「シンジは10番タイプの選手の中でも、ダビド・シルバと同じような新世代の部類に入る。車で言うならポルシェやBMWではなく、アウディのようにさらにスマートで、かつ精緻な動き方をするタイプだ。
だがモイーズはアウディ(香川)どころか、10番タイプ自体をまともに使ったことさえない。シンジにとってポイントになるのは、選手としての能力云々ではなく、モイーズが彼を使いこなせるかどうかだろう」
そして3つ目が、今回の怪我である。ようやく巡ってきた先発の機会。心に期するものは小さくなかったはずだし、試合の入り自体も悪くはなかった。
だが香川は前半8分に敵の選手と接触、鼻血を出してピッチ上に倒れてしまう。治療を受けてプレーを再開した後も意欲的なプレーを見せていたが、結局、19分にヤヌセイと交替させられる形になった。
ファンハールの香川評は二転三転していたが。
むろん、ファンハールが総額250億円もの補強に踏み切ったことを考えれば、最終的に香川が押し出されていた可能性はある。ユナイテッドでは、チーム生え抜きのウェルベックでさえ放出され、「自前の選手を重用する伝統が危うくなった」という不安の声が上がっているのが実情だ。
とは言え、仮に香川がキャピタルワン・カップで怪我をせずに、マタやヤヌセイとも十分に伍していける実力の持ち主であることを証明できていれば、ここまで急転直下でドルトムント復帰が決まることはなかったのではないか。メディアが伝えるファンハールの香川評は二転三転していたが、当初は、残留を希望する選手は意思を尊重するという報道もなされていたはずだった。