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香川真司を襲った“3つの不運”。
いつか「夢の劇場」に凱旋を。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2014/09/05 10:50

香川真司を襲った“3つの不運”。いつか「夢の劇場」に凱旋を。<Number Web> photograph by AFLO

ドルトムントでの練習に合流した香川真司。ギュンドアンらかつてのチームメイトと談笑する姿も見られた。

香川を移籍へと翻意させた要因はなんだったのか。

 香川の迷いのなさは、周囲の人間が驚くほどだったという。現に彼は8月4日、プレシーズンマッチのリバプール戦を終えた後にも、記者団に対して断言している。

「今はやっているサッカーもすごく楽しいですし、こういうサッカーを続ければ、結果は出ると思う」

「僕はその(残留する)気持ちでいるし、そのために戦っています」

 では香川を突然、翻意させた要因とは何だったのか。きっかけになったのは、8月26日に行なわれたキャピタルワン・カップだったように思われる。

 2回戦でMKドンズと対戦したユナイテッドは、3部に所属する格下のチームに、0-4でよもやの完敗。試合後の会見で、ファンハールは次のようにコメントしている。

「我々のチームでは9人の選手がけがをしているし、(前のサンダーランド戦を行なってから)48時間も経たないうちに、今日の試合を戦う形になった。

 だから私は2軍チーム、そしてユースチームの選手たちをチェックしなければならなかったし、その上で今回の試合に臨んだ」

 たしかにファンハールは、個々の選手を名指しで批判するような真似はしていないし、「個々の選手に対する疑問はいつも感じているが、チームとして評価しなければならない」と発言するに留まっている。またファンハールが歯に衣着せぬ発言で知られてきたことや、プレミアで未だ白星に恵まれておらず、是が非でも勝たなければならない試合だった点を考えれば、控えめなコメントだったとさえ言えるかもしれない。

一流選手に対し、公然と二軍扱いしたファンハール。

 しかし選手の側にしてみれば、たまったものではない。ドンズ戦の先発メンバーには、エルナンデスやウェルベックといった主力組(そして放出されることになる選手たち)も名を連ねていたが、彼らは2軍扱いされたのと同じ形になったからだ。

 香川には当然、一流選手としてのプライドがある。ましてやなかなか出場機会を与えられていないにもかかわらず、香川は香川なりにファンハールに敬意を払い、新監督についていこうという姿勢をみせていたはずだった。あくまでも推測の域は出ないが、おそらくこの発言を耳にした瞬間に、香川の気持ちはぷつりと切れたのではないか。

【次ページ】 ユナイテッドでの道を閉ざした三つの不運。

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