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完封負けも「しょうがないじゃない」。
日本文理“大井節”は最後も穏やか。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/08/24 18:00
「負けるのは悔しいよ。でもやっぱり子どもらを褒めてやりたいんです」と語った大井監督。5年ぶりの4強入りで、新潟県勢の初優勝を目指したが……。
「しょうがないよナー」
「がっかりしたなー」というのも「大井語」のうちのひとつで、そのフレーズが出るたびに、記者の爆笑を誘った。
そんな大らかな指揮官に見守られ、どんな投手も攻略してきた強打線だったが、この日の準決勝は、三重のエース今井重太朗の低めの変化球をとらえきれず、わずか5安打。新チームになってから、初めて公式戦で完封負けを食らった。
それでも大井はさっぱりと振り返った。
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「5安打だもんナー。でも、相手は緩急をうまく使ってよ。しょうがないよナー」
5失点したエースの飯塚に対しても、試合前、「疲労もあるし、5点は覚悟している」と言っていただけに、一切、責めなかった。
「予定通り5点で抑えてるんだから。しょうがない」
負けると「何かが足りなかった」と憔悴する監督が多い中、大井は何度も何度も「しょうがない」を繰り返した。
「うちは打てなかったら、こうなる。しょうがないよ」
そして最後はこう締めくくった。
「4千何校出場している中で、最後の4校に残ったんだよ。誉めてやらなきゃ、しょうがないじゃない」
「しょうがない」に始まり「しょうがない」に終わった試合後の取材は、言葉とは裏腹に、どこまでも穏やかだった。