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<'07年準Vバッテリーの蹉跌> 野村祐輔×小林誠司 「衝撃の敗戦を超えて」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/08/11 11:00

<'07年準Vバッテリーの蹉跌> 野村祐輔×小林誠司 「衝撃の敗戦を超えて」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

野村好みの捕手になるために小林が取った行動とは?

 中井がそのねらいを明かす。

「野村と小林はタイプが似ていた。同じようなピッチャーは2人いらんだろうと思ったので。まあ、ダメやったら、また戻せばいいというぐらいの気持ちだったんです」

 小林は驚いたものの、「どんだけミスしてもいいから、一度、死ぬ気でやってみろ」という中井の言葉を真に受けた。

 根が真面目な小林は、それから食事をするときも、風呂に入るときも、野村と行動をともにし、野村好みの捕手になろうと努めた。中井が言う。

「プライドの高い子だったらできないこと。その点、誠司は大人だったんでしょうね。もともと捕手向きだったのかもしれない」

 小林がもっとも気を遣ったのは構え方だった。通常は体が大きく見えるように構えるものだが、制球力のある野村は、体を小さくして構えて欲しいと言った。的が小さい方が集中しやすいからだ。

食事風景からもわかる2人の性格の違い。

「野村は気持ちが強いので、ピンチでインコースぎりぎりに構えてもびちびちにくる」

小林誠司 Seiji Kobayashi
1989年6月7日、大阪府生まれ。広陵高の正捕手として3年時の夏に甲子園準優勝。同志社大、日本生命で実力を蓄え、'14年にドラフト1位で巨人に入団。1年目の今季は開幕から一軍に帯同。178cm、74kg。

 小林と野村の性格の違いを中井がわかりやすく説明する。

「この前、2人がうちにきて、一緒に食事をしたんです。手巻き寿司を用意してたんですけど、野村は好きじゃないらしく、あんまり食べてなかった。だから、うちの家内がハンバーグつくってあげようかって言ったら、はい、って。それで『僕だけすいません』と言うわけでもなく、ひとりでのんびりハンバーグを食べてるんです。それに対して誠司は、ちゃんと手巻き寿司を食べて、『おいしいです』って言えるタイプですね」

 高校時代、野村は身長176cmで、体重は65kg。一方、小林は身長175cmで、体重は67kg。2人とも野球選手としては小柄で、中井も「プロに行けるとは思わなかった」と振り返る。だが、新チームがスタートすると2人は抜群のコンビネーションでチームを勝利に導いた。秋は中国大会を制覇し、翌年春の選抜大会では準々決勝で帝京に1-7で敗れたが、全国8強入りを果たす。

 帝京戦で初回に6失点し敗因をつくってしまった野村は、それ以降、練習試合で背番号「6」をつけさせられた。中井からの「あの悔しさを忘れるな」というメッセージだった。

【次ページ】 決勝戦の8回裏、バッテリーに待っていた残酷な展開。

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