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コンテの電撃辞任とアッレグリ就任。
ユーベ監督交代劇でセリエが変わる!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/07/24 10:40
昨シーズン、コンテ率いるユベントスは欧州記録となる勝ち点102を積み上げた。そのコンテが発した「欧州では勝てない」という言葉は重い意味を持つ。
戦力の上積みなしでCL8強がノルマに……。
コンテは、一からチームを作り直したかった。
己の心身を激しく消耗させながら、毀誉褒貶とともに古巣を再興させた今、闘将は欧州の列強クラブに太刀打ちできるチームを必要としていた。さもなければ、自身のモチベーションが保てない。
しかし、昨季終了後の面談でユベントス上層部から出された答えは「CLでの8強入りが新シーズンのノルマ。ただし、戦力レベルは現状から上乗せなし」というすげないものだった。
コンテが要求した2人の獲得には、合わせて8千万ユーロ級という巨額の資金が必要となるはずだったが、マロッタCEOとアニェッリ会長は、2015年からの新スポンサーであるアディダスからの資金とTV放映権料の契約更新による来年の収入増を見越して、今夏の大型補強を見送る経営判断を下した。
経営陣が“我慢しろ”という1年もの時間に、コンテは確信を持てなかった。一度は説得され、続投を承諾したが、バカンスの後にもエネルギーは沸いてこなかった。
イタリア代表監督にコンテ待望論が。
5年前の夏、バリを率いてセリエA昇格を果たしたコンテは、シーズン後に補強方針を巡ってクラブ上層部と衝突し、やはり突然辞表を出したことがあった。契約延長して、わずか3週間後のことだった。
今回のシーズン始動後の辞任は、当然「無責任だ」というファンの批判も招いた。しかし、短い指導者歴しか持たないはずの44歳のコンテが、ユーベをカルチョ・スキャンダル後の低迷から脱出させることに成功したのは、妥協とは無縁だったからこそだ。その功績は誰にも否定できない。
そして今では、妥協するくらいなら職を失うことを微塵も怖れない闘将コンテに、ブラジルW杯で惨敗したイタリア代表再建を託そう、という声が沸き上がっている。
フリーとなったコンテには「今季いっぱいイタリア国内のクラブを指揮しない」というユーベとの合意があるが、年俸の条件も含め、彼がアズーリを率いることへの障害は何もない。
闘将自身は「明日のことは明日考える」と、充電期間に入った。コンテとイタリアの命運を左右する同国サッカー協会新会長選は、8月11日に行なわれる。