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田中将大は「投球過多」だったのか?
“25歳までに1400回”というデータ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2014/07/12 10:30
昨年の日本シリーズでも、田中将大の起用法にはアメリカから熱い視線が注がれていた。今回の怪我が長期化するようだと、投球回数についての目線はさらにシビアなものになるかもしれない。
開幕時の先発5人で無事なのは黒田だけ。
ヤンキースにとっては7~8月の間、なんとか優勝戦線にとどまり、田中の復帰を待ちたいところだ。
ただ、開幕時の先発投手5人中4人が離脱した状態で(残っているのは黒田だけ。ここに彼の価値がある)、踏みとどまるのは奇跡に近い。
残る方法はトレードによる投手陣の補強だが、ヤンキースのマイナーには他球団の食指をそそるようなプロスペクト(有望株)がおらず、GMとしてもデビッド・プライス(レイズ)級の先発を獲得するのは、相当の出血を覚悟しなければならない。
私は、田中の戦線離脱によって、ヤンキースのポストシーズン進出の可能性はかなり低くなったと見る。
日本人投手の価値論争が再燃する?
今後田中の故障に関して、アメリカで様々な議論が巻き起こると予想される。
もともと田中について、昨季の日本シリーズでの「登板過多」がメジャー側では問題視されていた。田中を獲得することは、かなりのリスクを取ることになる――そう考えて獲得に乗り出さない球団もあった。
日本シリーズはたしかに、投げ過ぎであったと思う。ただ、ケガの原因は複合的なものであり、小中学校時代、高校野球、そしてメジャーリーグに移籍してからの中4日での登板などを併せて、考えなければフェアではない。
しかし、アメリカでは20代前半の登板過多は、投手寿命に影響するという考え方が支配的だ。
今回、田中のケガによる関連報道で気になったのは、現在のメジャーリーグの投手で、25歳までに1400イニング以上を投げた投手は4人だというデータだ。
フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ) 1694回3分の2
マット・ケイン(ジャイアンツ) 1493回3分の1
ダルビッシュ有(レンジャーズ) 1459回3分の2
田中将大(ヤンキース) 1444回3分の1
日本人がふたり。今後日本人投手が移籍する場合は、1400イニングというのがひとつの「目安」になってしまうかもしれない。
どうやら、前田健太(広島)、金子千尋(オリックス)らがメジャー移籍を希望した場合にも、大きな影響を与えそうなのだ。