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岡崎慎司が“負けて気づいたこと”。
「W杯をやっと経験できたな、と」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/06/19 16:30
ザックジャパンで最多の得点を決めている男は、ギリシャ戦で「攻撃」に重心をうつす決意を固めていた。岡崎慎司の代表39ゴール目を日本中が待っている。
“何も考えず”という言葉の意味。
“何も考えず”というのは、文字通り、そのままの意味ではない。これも以前、岡崎が話してくれた。
「子どもの頃って、リスクとか考えず能天気に“やってやる”みたいな感じじゃないですか? でも今はいろいろと考えて、無理かなぁとか思うこともある。そうやって小さくまとまりたくないから、“何も考えず”という感覚は大事だと思う。
もちろん、今はただの能天気じゃ通用しない。だから、考えずにプレーするために、考えるんです。練習の場だったり、チームメイトとの会話だったり、寝る前だったり……。あらゆることを考えて準備しておけば、試合中は余計なことを考えずにプレーできる」
試合前に様々な状況をイメージして、ピッチに立つという岡崎は、「トラップミスるんちゃうか?」とネガティブなことも自然と考える。「そうすると、ドキドキが止まらなくなるんです」と笑う。
勝ちたいというより、出したいという感じ。
そういう過程があるからこそ、無心でピッチに立てるのだ。
やるべきことは、明確になった。
もう、迷ったり戸惑ったりしている余裕はない。
「ただ、出し切るだけです。勝たなくちゃいけないというよりかは、出したいという感じですね。こういう舞台で自分たちは力を出せずに負けてきている。力を出せば、結果がついてくると思うし。みんなで、声を掛け合いながら、点を獲りに行こうという気持ちを持ち続けたい」
負けたからこそ、気づけた思い。敗戦を意味のあるものに変えられるか? その鍵は彼自身が握っている。
「積極的に裏を狙うだけ」
岡崎は最後に力強くはっきりとそう言って、前日練習のピッチへと向かった。