野ボール横丁BACK NUMBER
実は紳士で技術の人、糸井嘉男。
投手が語る、驚愕のバットスピード。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/06/06 10:40
6月5日終了時点で打率は両リーグで唯一3割5分を越え1位。OPSも1に迫り、まさに国内最強打者と呼ぶに相応しい成績を残している糸井嘉男。
日本ハムの増井が語る「飛ばす力とミート力」。
糸井というと、ずば抜けた身体能力ばかりが注目されるが、井川が語ったように技術の人でもある。体の開きを極限まで我慢し、瞬時に爆発させられるのは、打撃センスがなければできない高等技術だ。
糸井の才能を見いだした日本ハムの前監督、梨田昌孝は糸井を「イチローと松井秀喜を足して二で割ったような選手」と評していたが、言ってみれば、「イチロー」的部分だ。
技術も身体能力に支えられているといえばそうだが、糸井を「超人」という側面だけでは語り切れないのも事実だ。
井川とまったく同じようなことを話していたのが、日本ハムの抑えのエース、増井浩俊だ。
増井に日本のプロ野球界で最高のスラッガーは誰だと思うか、と問うたことがある。すると「糸井さんです」と即答した。糸井がオリックスに移籍し、実際に対戦するようになって、その凄さに気づいたのだという。
「飛ばす力と、ミート力を兼ね備えているという意味では、糸井さんが最高峰だと思う。ミートポイントが近くて、振り遅れたと思ったら、三塁線を抜かれていることがある」
技術の人であり、じつは紳士でもある。
また糸井というと「宇宙人」と呼ばれるように、風変わりな性格な持ち主として語られることが多い。
だが井川の中では、強烈なピッチャーライナーもさることながら、その後の糸井の対応も印象に残っている。
「プロ野球の選手って、インコースとかを投げると、けっこうにらんできたりするんです。『ケガさせんじゃねえよ』って感じで。でも、そういう選手ほど実力がない。でも糸井さんは試合が終わった後、わざわざ僕のところへ来てくれて、『大丈夫だった?』って。とてもいい人なんだと思いましたね」
糸井は技術の人であり、じつは紳士でもある。