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歴代監督が頼り続けた天才司令塔。
ピルロ、筋金入りのアズーリとして。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/03 10:40
ユベントスで優勝を果たし、合流したイタリア代表でもコンディションのよさそうな動きを見せるピルロ。現在35歳、ブラジル大会は10年以上にわたる代表としてのキャリアの集大成となるか。
あらゆる指導者が、ピルロをチームの中心に据えた。
あらゆる指導者が、ピルロの持つずば抜けた足元の技術と戦術眼、そして静かなリーダーシップを頼りにした。
ドイツと南アフリカでアズーリを率いた名将リッピ(広州恒大)は「彼は物言わぬリーダー。口を開かぬ代わりに、彼の右足が雄弁に物語ってくれる」と評している。
アズーリのユニフォームは、ピルロにとって第二の肌であり、大ベテランと呼ばれる年齢になった彼の人生の一部と呼ぶべきものだ。寡黙なイメージからは想像しづらいが、俺の血はアズーリなのさ、と真顔で言い出しかねない。ピルロこそ、筋金入りのアズーリなのだ。
「15歳のときからずっと代表に選ばれて、いろいろな大会で多くのタイトルを獲ってきた。国を背負って戦うこと以上に素晴らしいことはない。俺にとって、イタリア代表のユニフォームはやはり特別なんだ」
「上に行くための切り札はこちらの手の内にある」
負けず嫌いの天才ピルロは、過去にこだわる。
連覇を狙った4年前の南アフリカ大会では、左脚ふくらはぎの故障でろくにプレーできず、グループリーグ敗退の憂き目に遭った。
EURO2012では獅子奮迅の活躍で大会の主役の一人となったが、スペインとの決勝戦で0-4の惨敗。「優勝するつもりだった」だけに悔し涙をにじませた。
昨夏のコンフェデレーションズ杯で3位を獲得したものの、右脚の筋肉故障でグループリーグのブラジル戦に出場できず。再び顔を合わせたスペインとの準決勝ではPK負けを喫している。
苦杯を嘗めた分、“今度こそ”という思いは強い。
「イングランドとウルグアイのいるグループDが厳しいことは間違いないが、昨年のコンフェデ杯で手応えはつかんだ。ブラジルでやるべきことはわかっているし、上に行くための切り札はこちらの手の内にある」