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メッシ獲得は「353億円」の価値有り!
選手の移籍で発生する経済効果とは。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2014/05/21 16:30
4年連続のバロンドール、シーズン史上最多得点など多くの記録を打ち立てたメッシは、史上最高額の年俸を得る選手となった。もし移籍するとなれば、その移籍金は天文学的な数字になって当然なのだ。
ロナウドのユニフォームは120万枚売れた!
最も大きなインパクトが予想されるのが、グッズ収入です。メッシ加入による収益増を推定するために、スター選手の補強をどこよりも積極的に行なってきたレアル・マドリーのデータを紹介しましょう。
レアルは2009年、マンチェスター・Uからクリスティアーノ・ロナウドを当時の史上最高額となる8000万ポンド(136億円 ※現在のレート1ポンド=170円で計算、以下同)で獲得しました。レアルの発表によれば、その後の1年でロナウドのユニフォームはマドリード市内だけで120万枚が売れるなど、売上は9000万ポンド(153億円)に上ったといいます。
また'03年に移籍金3510万ポンド(約60億円)でデイビッド・ベッカムを獲得した際には、クラブのマーチャンダイズ部門の売上が67%も増加。高額な移籍金はユニフォームを中心としたグッズ売上だけで元が取れたと言いたげなのです。
しかし、売上の全てがクラブの懐に入るわけではありません。Jリーグ関係者に取材したところ、ユニフォームがスタジアム以外のスポーツショップで売れた場合、クラブの収入になるのは原価と販管費を差し引いて売価の約25%とのこと。グッズ収入増のインパクトは確かに大きいとしても、それだけで移籍金をカバーできるという論理はかなり無理がありそうです。
先のC・ロナウドの例で考えれば、ユニフォームの販売によるクラブの収入は153億円の25%、およそ35~40億円と見るべきであり、両選手の年齢や人気を加味するとメッシも同程度かやや控えめの30~35億円ほどと評価するのが妥当ではないでしょうか。
欧州トップクラブはすでに「満員御礼」。
チケットも、選手個人が強い影響力を持つ収益分野です。「あの選手のプレーが見たい!」というサポーター心理は、来場への大きなモチベーションになることは間違いありません。
しかし欧州サッカーの観客動員の現状に照らせば、メッシのような選手の獲得を画策するクラブの試合はすでに「満員御礼」。獲得メリットとしてはプラスマイナスゼロという評価にならざるを得ないのです(不人気なチームに行けばチケット売上の大幅増という見返りを期待できますが、そうしたチームにメッシの移籍金や年俸を払うことはまず不可能です)。