日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
森重真人がブラジルで得たいもの。
メンバー発表直前に語った「今」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2014/05/16 10:40
FC東京ではキャプテンに就任、課題だったラフプレーも大幅に改善しさらなるステップアップを目論む森重真人。速さと強さを兼ね備えた日本では貴重なセンターバックだ。
森重が繰り返す、収穫と課題の日々。
――成果が出た試合として、4月19日のセレッソ大阪戦(ホーム)が挙げられると思います。柿谷曜一朗、フォルランというアタッカーに対して、出足の鋭い守備でほとんど仕事をさせなかった。特にあの試合で感じたのは、90分間、集中力が途切れず、隙を与えなかったこと。最終ラインの迫力が、周りの激しい守備を促しているようにも感じました。
「試合に入り込んでいないと、いろいろなことに対応もできない。声だったり、単純にヘディングで跳ね返す勢いだったり……後ろからの気迫というものはチームにも伝わりますから。あの試合は凄く集中してやれた試合ですけど、これを毎回続けていくようにしないとダメですね」
森重自身、収穫と課題の日々を繰り返している。
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セレッソ戦のように頑強な守備を統率する完璧に近いパフォーマンスを披露することもあれば、大宮アルディージャ戦(5月6日)では最後の最後になって1本のロングパスから決勝点を献上してしまった。ただ、ミスがあろうとも、それを成長の糧にできるのが森重の強みと言えるだろうか。
世界大会ではまだ満足したことがない。
3歩進んでは2歩下がる。
「三百六十五歩のマーチ」ではないが、結果的には1歩、いや半歩でも進んでいることを彼は実感できている。新たな課題が出てくれば打ち消していくだけ。ゆえに一切の迷いもない。
最後に一つ、聞いた。
ブラジルW杯に出場して、何を得たいか、を。
彼はじっと前を見据えるようにして、言葉を吐き出した。
「僕の場合、ワールドユース、北京五輪を含めて世界大会では満足を得られたことがないんです。だからブラジルでは、絶対に何かを掴んで帰りたい。自信となるものを、しっかりと。
そのためにも結果は必要。勝ち続けていくことが、何かを得るための一番の近道だと思うので」
目は口ほどに物を言う。内に秘める不退転の覚悟は、伝わってきた。
5月12日、W杯メンバー発表。
森重は順当にメンバー入りし、ブラジルに向けて気持ちを新たにしたに違いない。しかし彼の心にあるのは来月のブラジルよりも、まず17日に控えるガンバ大阪戦のことだろうか。
次につなげるための今。
ブラジルで輝くため、森重真人は「今」にこだわる。