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窮地のリバプールを“キング”が救う。
ダルグリッシュ監督復帰の効果は? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/01/20 10:30

窮地のリバプールを“キング”が救う。ダルグリッシュ監督復帰の効果は?<Number Web> photograph by AFLO

現役時代はセルティックとリバプールで活躍したダルグリッシュ。スコットランドとイングランドの両リーグで100得点したのは彼が初めてだった

トーレスも認めるダルグリッシュ代行監督の存在感。

 さらには、ピッチ上でのインパクトも期待できる。フェルナンド・トーレス蘇生の可能性だ。リバプールの復調には、新戦力の獲得以上にスペイン代表FWの復活が欠かせない。リーグ前半戦で5得点に終わったトーレスは、メディアで「やる気が感じられない」とまで非難された。その背景には、同胞のベニテス解任後に「後任にもトップレベルの監督を」と口にしていたエースが、ホジソンを力不足と見ていたとする説がある。少なくとも、ピッチ上のトーレスに「プレッシャー下の監督のためにも」という意気込みが感じられなかったことは事実だろう。

 そのトーレスは、4年前の移籍当時に「比較は勘弁して欲しい」と報道陣の前で語ったほど、ダルグリッシュの存在の大きさを認めている。前監督の下で意欲を失っていたとすれば、トップクラスの指揮官の下で再びリバプールのために「本気」になっても不思議ではない。 一方のダルグリッシュも、「FWとして彼よりもひどい不振を経験したことがある。助言はもちろん、自分にできることは何でもする」と、トーレス復活への支援を公言している。

4位争いに加わるほどに復調すれば正監督として続投も。

 もちろん、現実は厳しい。「サッカーでは愛情よりも結果が物を言う」とダルグリッシュ本人が認めているように、就任翌日には、宿敵マンチェスター・Uに敗れて(0-1)FAカップ敗退が決まった。続くブラックプール戦には、スティーブ・クラーク(前ウェストハム助監督)を1軍コーチに迎えて臨んだが、トーレスの右足一閃で先制しておきながら逆転負けを喫し(1-2)、リーグでも黒星発進となった。

 だが、仮に下位のままシーズンを終えたとしても、降格さえ避けられれば事態はうまく収まるだろう。クラブは、シーズン終了後に予定通り代行監督にお役御免を告げ、新たに正監督を迎えて再起を図れば良い。逆に、4位争いに加わるほどに復調すれば、誰もが納得の状態でダルグリッシュの続投が実現するに違いない。「正監督になれれば最高だ」と言うダルグリッシュは、監督として10年間のブランクがあるとはいえ、経営陣が後任の条件に挙げる監督としての能力、哲学、人心掌握術の全てを備えていることをとうに証明済みなのだから。

【次ページ】 ダルグリッシュ退任の場合も次期監督への重圧は消えず。

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