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田中将大は、打たれても負けない。
ムードを変える説明不能な“パワー”。
text by
出村義和Yoshikazu Demura
photograph byGetty Images
posted2014/04/10 16:45
田中将大はホームデビュー戦となったMLB2戦目も躍動感あふれる投球を見せた。メジャー1年目でのスムーズなスタートは、すでに2つの記録を残している。
地元デビュー。田中将大にとってのいいニュースは先制の3ランホーマーを浴びながらも負け投手にならなかったこと。悪いニュースは7イニングスを投げて10個の三振を奪いながらも勝ち投手にはなれなかったことだ。
前日、ヤンキースの投手陣から先発全員の20安打、14点を奪ったオリオールズ打線は上下ムラなく振れていた。初回、失点にはならなかったが、2番デルモン・ヤングに痛烈な左二塁打を打たれる。リズムに乗れぬまま、2回には先頭のマット・ウィータースに右前、一死後スティーブ・ランバードッジに左前に運ばれてピンチを迎える。
マウンド上の田中には動揺は見られなかったが、次打者ジョナサン・スコープの2球目に投じたスライダーは明らかな失投だった。真ん中、高め。将来の中軸打者として期待の高い22歳のバットは素早く反応した。打球は瞬く間に漆黒のニューヨークの夜空に舞い上がり、レフトポールを巻き込むように2階席へ飛び込んでいった。
「走者をためて、9番打者に打たれる。やってはいけないことだった」と、田中は悔しさを滲ませる。
打たれても負けムードにならない、説明不能なパワー。
しかし、負けない。リードされても負けのムードにもならない。田中の持つ説明不能なパワー。その裏、カルロス・ベルトランとケリー・ジョンソンにソロホーマーが飛び出して1点差。スタンドのムードは一変、追撃ムードが高まる。実際、4回裏にはベルトランの二塁打を足場に追いついてしまう。
打たれたあとに、持ち前の修正能力の高さを発揮する。それが粘りの投球に繋がる。トロントでのメジャーデビュー戦でみせた投球ぶりは、この日も変わらない。それは球数に明確に反映されている。3回の24球をピークに、4回以降は13球、14球、6球、10球。得意のスプリッターに頼るのではなく、豊富な球種を使い分ける。5回の先頭ニック・マーケイキスに初球カーブを投げて中飛に打ち取った場面などは、その典型的なケースだ。