日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
J2から狙う「1%」のW杯代表入り。
川口能活は、今なお川口能活である。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/04/07 10:40
川口能活はブラジルW杯を38歳で迎える。最年長出場は1994年アメリカ大会に出場したカメルーンの42歳、ロジェ・ミラ。
昨年は22チーム中21位、発展途上の岐阜。
グラウンドに室内のトレーニング場が併設されていなければ、練習前の準備は家でやればいいだけのこと。ストレッチ、スクワット、ジャンプの3点セットが事前の主な準備になるが、「下に住んでいる方がいるので」とジャンプだけはグラウンドに到着してからこなしているという。厳しい環境に置かれたことも、楽しんでいるように見えた。
FC岐阜は元日本代表の川口、三都主アレサンドロら大量の補強をしたとはいえ、昨季は22チーム中21位という成績だ。今季も開幕から2連勝したものの、その次に連敗を喫するなどまだまだ発展途上のチームだと言える。守護神はプレーできる喜び、使命感を体に走らせながら、ゴール前に立ちはだかっている。
南アW杯での“サプライズ選出”が必要だった理由。
不屈の魂。
4年前、岡田武史監督は南アフリカW杯メンバー発表で川口を“サプライズ選出”した。前年1月のバーレーン戦から1年半近く代表から離れ、加えて右脛骨骨幹部骨折という全治6カ月のケガを乗り越えて実戦復帰したばかりというタイミングだった。
会見の席で岡田は言った。
「彼のリーダーシップの部分と、選手から一目置かれている存在が、大会を戦ううえでどうしても必要だと考えた」
川口はチームキャプテンに任命され、事前合宿地のスイス・ザースフェーで選手ミーティングを呼びかけるなどリーダーシップを発揮している。
チームキャプテンという自分に課せられた役割をこなしたうえで、彼は日々のトレーニングに打ち込んでいた。第3GKの立場を受け入れたわけではなかった。試合に出るという強い気持ちをトレーニングにぶつけた。
メンバー23人の中で最も出場する可能性が低いのかもしれない。それなのに「選手から一目置かれている存在」が一心不乱になって練習に打ち込んでいれば、周りはどう思うだろうか。レギュラーになった者は、出たくても出られない選手たちの思いを汲むだろうし、控えに回る選手たちだって少なからずとも刺激を受けるだろう。ここまで考えたうえで、岡田は川口の存在を必要としたのではないだろうか。