日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
J2から狙う「1%」のW杯代表入り。
川口能活は、今なお川口能活である。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/04/07 10:40
川口能活はブラジルW杯を38歳で迎える。最年長出場は1994年アメリカ大会に出場したカメルーンの42歳、ロジェ・ミラ。
「4年後のブラジルW杯でピッチに立つために」
陰でチームを支えた川口は大会後、こう語っていた。
「南アフリカでは、チームが一つになって戦ったなという実感があったし、僕の姿勢を受け入れてくれたチームには感謝の気持ちでいっぱいです。
ただ、試合に出られなかったことは、僕だって正直悔しかった。これが集大成だとは思っていません。4年後のブラジルW杯でピッチに立つために、南アフリカW杯で学んだことを活かしていきたい」と――。
このW杯以降、代表には一度も呼ばれていない。右アキレス腱断裂という大ケガを負い、ジュビロ磐田では正GKの座を失い、そして戦力外通告、J2移籍……。
冒頭に、ブラジルW杯メンバー入りの可能性は「99%ない」と書いた。おそらく川口自身もそう思っているとは思う。しかし捉え方としては逆ではあるまいか。「99%ない」ではなく「1%ある」と。その1%のために、彼は全力を尽くそうとしている。
ザックジャパンには常連のメンバーがいる。ケガで離脱している選手がいる。海外で出場機会に恵まれない選手がいる。メンバー当落線上の選手がいる。Jリーグや海外で結果を残している選手、代表から遠ざかっている選手がいる。候補者リストは63人いるとのことだが、当然そこに入らない選手がいる。
メンバー発表は5月12日。誰もが死力を尽くすべし。
だが、まだ何も決まったわけではない。
一縷の望みがある限り、誰もが死力を尽くすべしと川口の背中が教えてくれる。
全ての選手たちのW杯に対する思いが強ければ強いほど、それが選ばれた23人の原動力にもなる。実際、南アフリカW杯での川口がそうだった。
「ケガでずっと試合に出られない状態だったから、選ばれなかった選手たちには、申し訳ないな、という気持ちがあのときの自分のなかには凄くありましたね」
だからこそ、選ばれなかった選手のためにもという気持ちが強かった。
川口は言う。
「J1だろうが、J2だろうが、プレーしていればきっといろんな人が見てくれているはず。岐阜のために自分のすべてを尽くして、自分がまだまだやれるというところを見せていければと思います」
マイアミの奇跡、ジョホールバルの歓喜、4度のW杯。いくら伝説を残そうとも、己に満足することなく、目標を目指すその姿勢、そのマインド。川口能活は、今なお川口能活であり続けている。
運命のW杯メンバー発表は5月12日に決まった。
あきらめない気持ち。それがブラジルW杯に臨むニッポンの大きな力となる。