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「無観客」の経済損失は約3億円!
浦和の年間利益を超す、その内訳は?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2014/03/28 16:30
いつもは熱狂に包まれる埼玉スタジアムに、この日は選手の声とボールを蹴る音だけが響いた。
無観客試合の実施で発生した、追加の「支払い」は?
次に考えなければならない第2のインパクトは、浦和が無観客試合の実施にともなって補填(支出)することとなった金額です。
その一つ目は、シーズンチケットホルダーに対する払い戻し。浦和のホームゲームは通常およそ4万人を動員し、そのうちシーズンチケットがおよそ半分を占めていると考えられます。シーズンチケットは比較的単価の高い席が多く購入されていますが、同時に割引もされているため、単価は前売り・当日券と同じ3000円と想定。2万人のホルダーがいるとして、1試合分の払い戻しを行なうのに必要な額は3000円×2万枚=6000万円となります。
1試合の広告費はおよそ2000万円。
また年間約20億円ある広告収入に関しても考慮しなければなりません。この試合はテレビ中継こそ通常どおり行なわれましたが、スポンサーの意向によりピッチ周辺に広告看板が設置されず、その分の払い戻し(違約金)が発生する可能性があるからです。
広告収入のうち高い割合を占めるユニフォーム広告は、テレビ中継が行なわれたことを考えれば価値が減じたとは言い難いでしょう。しかし、露出機会をまるまる1試合分「損」してしまった看板広告(年間5億円と仮定)は話が別。浦和の年間ホームゲーム数は、レギュラーシーズン17試合のほかにヤマザキナビスコカップ(3試合~)や天皇杯(1試合~)等を加えた25試合前後で、1試合換算の看板広告収入は5億円÷25試合=2000万円と計算できます。
実際のところ、浦和がスポンサーに対して1試合分の広告料を返すかどうかは分かりませんし、私は返さない方向で調整される可能性の方が高いとは思います。ただ、Jリーグのトップクラブである浦和の公式戦が1試合無観客となったことで、約2000万円の価値を持つ広告機会が失われたことは留意すべきでしょう。
さらに浦和は、遠方から移動しての観戦を予定していたサポーターに向けて、購入・予約済みの交通費や宿泊費のキャンセル料を支払うことを決めています。この内容を精査するため、遠方からの来場者の行動パターンを整理してみましょう。