スポーツのお値段BACK NUMBER
「無観客」の経済損失は約3億円!
浦和の年間利益を超す、その内訳は?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2014/03/28 16:30
いつもは熱狂に包まれる埼玉スタジアムに、この日は選手の声とボールを蹴る音だけが響いた。
2.5~3億円
(浦和レッズの1試合の「無観客試合」で失われた経済価値)
3月23日、浦和レッズ対清水エスパルスの一戦は、Jリーグ史上初となる「無観客試合」として開催されました。埼玉スタジアム2002(6万3700人収容)の客席は空っぽで、周辺での応援も禁止。観戦の機会を奪われたサポーターたち、異様な静けさの中で戦わざるをえなかった選手たち、双方にとってつらい経験となったことは言うまでもありません。
経済的な視点で考えると、今回の無観客試合はクラブ(主催者である浦和レッズ)の財政にとっても極めて大きな打撃でした。「スポーツのお値段」第6回では、その詳細を分析・評価していきたいと思います。種々のデータについては、Jリーグクラブの経営経験者に助言を求めました。
本来手にできるはずだった収益は、約1億円。
浦和は、本来手にできるはずだった収益を、無観客となったことでごっそりその機会ごと失いました。これが第1のインパクトです。
まずはチケット収入。この試合の前売りチケットの売れ行きは、浦和の発表によると約2万6000枚。これに当日券の仮想売上を加える必要があります。当日券の販売枚数は平均的なJ1クラブで500枚前後。浦和ホームゲームの平均入場者数はJ1平均の約2倍(2012年度)ながら、売上ベースで見ると約3倍(同)です。これは、無料招待チケットなどの割合が低く、きちんとチケット代を支払って観戦する(スタジアム観戦に対する消費意欲が高い)サポーターが多いことを意味しています。
こうした傾向をもとに、この試合で売れたであろう当日券は平均的なJ1クラブの3倍にあたる1500枚と想定。平均単価を3000円とすると、前売り・当日券の売上として入ってくるはずだった金額は、3000円×(2万6000枚+1500枚)=8250万円となります。
さらにスタジアム内で販売される飲食ならびにグッズの売上(1試合分)は、それぞれ1200万円、600万円と試算しました。これらも平均的なJ1クラブの3倍として算出しています。
ここまでの数字を合算した約1億円(8250万円+1200万円+600万円)が、第1のインパクト「稼げるはずだったのに稼げなかった」金額ということになります。