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「無観客」の経済損失は約3億円!
浦和の年間利益を超す、その内訳は?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2014/03/28 16:30
いつもは熱狂に包まれる埼玉スタジアムに、この日は選手の声とボールを蹴る音だけが響いた。
ホテルや新幹線の費用負担は、うまい対応?
「遠方からやって来る=清水から浦和へ移動するアウェイのサポーター」と単純化して考えます。今回の試合のキックオフは15時。良い席で応援するため、あるいは横断幕を用意するために一刻も早くスタジアムへ入りたいというコアなサポーターでも、車で早朝に清水を出ればキックオフ6時間前の9時にはスタジアムへ到着できます。また車に泊まったり、試合前夜にガムテープで場所取りをしてからスーパー銭湯に泊まったりするケースも多いと聞きます。
コアなサポーターは年間10試合以上も遠征することになるため、コスト意識は高いのです。こうしたことから、今回の試合観戦のために宿泊を予定していた人はかなり少ないと見るべきです。
仮にホテルを予約して宿泊するつもりだったにしても、無観客となることが発表されたのは試合の10日前であり、キャンセル料が発生しないケースがほとんどだと考えられます。また、新幹線のキャンセルにかかる費用も数百円程度。「キャンセル料の全額負担」は、メディアでは異例の対応として取り上げられましたが、実際のコストは軽微なものと言えるのです。むしろ、「負担額の割にしっかりと誠意を表現できる」うまい対応だという言い方もできるのかもしれません。
仮に浦和が看板広告料金(1試合分)をスポンサーに返納するとして、第2のインパクトである「無観客試合によって発生する出費」は、スタジアム周辺に重点配備した警備員スタッフの人件費等の諸経費も含めて、6000万円(シーズンチケット払い戻し)+2000万円(看板広告費返納)+α(諸経費)=8000万~1億円近くに上ります。
クラブだけでなく、周辺の経済圏にも大きな損失が。
これに加え第3のインパクトとして考慮すべきは、交通機関やホテル、スタジアム周辺の商店等への影響です。キャンセル料を負担する浦和の支出は軽微と書きましたが、移動するはずの人が移動しなかった交通産業、宿泊するはずだった人が宿泊しなかったホテルにとっては大きな機会損失が生まれたことは間違いありません。4万人の平均交通費500円として2000万円、コンビニ等でのちょっとした買い物の消費額を同じく500円として2000万円、合計4000万円の売上が消えたわけです。
さらに金額的に大きいのは、遠方(主に清水)から足を運ぶサポーターによる消費です。その数ざっと2000人と見積もります。泊りがけで観戦に来るサポーターは25%の500人とカウント。これらの条件で考えると、往復交通費2000万円(1万円×2000人)、宿泊費500万円(1万円×500人)、飲食その他1000万円(5000円×2000人)の合計3500万円が、遠方からの来場者が生み出すはずだった経済効果ということになります。
これにより第3のインパクト「交通・宿泊・周辺の商店等の経済損失」は、合わせて7500万円という試算結果になりました。